赤黒いマグマのような麻辣スープに入れた具材を口に入れた途端、麻辣の風味が口の中で爆発し、それは一瞬にして味覚が崩壊するほどの衝撃。どっと汗が噴き出し、頭の中ではもうやめろと言っているのに、なぜか箸を動かす手が止まらない。その火鍋の魅力に取り憑かれた現地在住の日本人も数多い。最近、日本でも冬場に「コラーゲン火鍋」などが出現し、女性の間で人気を博している。 ご存じの方も多いとは思うが、火鍋はいわば中国の鍋料理。中国全土、高級店から庶民的な店まで、街中の至るところに火鍋レストランがあり、いつも大勢の客でにぎわっている。火鍋は、中国人の食生活になくてはならないものとなっている。 そんな中、驚くべきニュースが中国全土を駆け巡った。経済が発展するとともに中国人の肥満化が進んでいるが、その大きな原因は火鍋だというのだ。 事の発端は、英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」(7月6日付)に掲載された記事。「肥満は拡大を続ける中国にとって文化的な問題である」という記事の中で、中国人の食生活と肥満化について取り上げ、中国人の肥満化の原因は火鍋だと断言しているのだ。 それよると、人々が豊かになるとともに食事に入れる油の量も増えており、野菜でさえ太る原因となっているという。油と塩辛い料理、つまり火鍋や焼き肉が肥満化の真犯人であるというのである。 実際、火鍋に使われるスープの原料は水4に対して油6と半分以上が油で、しかもその油は牛脂がメイン。煮えた具材につけるタレにも油を大量に使うことが多いので、どんな素材だろうが、食べるときにはもう油まみれとなる。 深セン市在住の日本人商社マンは言う。 「日本からの出張者でよく『火鍋が食べたい』という人がいますが、翌日、絶対に下痢になる。日本人には油が多すぎて消化できないんです。おまけに激辛なので、肛門もずっとヒリヒリ痛い状態が続く。興味本位で食ったら、地獄を見ますよ(笑)。ま、下水油が使われてる可能性が高いので、僕は絶対、食べませんけどね」 それはさておき、この記事の中国語翻訳版がネットに掲載されるや否や、敏感に反応したのが重慶人。重慶といえば火鍋の本場である。重慶人たちは火鍋をこよなく愛し、全国展開の火鍋レストランチェーンの中には、重慶に本店を置いているところも多い。 「火鍋を食べたら汗を大量にかく。新陳代謝がよくなるんだから、肥満になるはずがない!」 「火鍋が問題なのではなく、おいしくて食べ過ぎるから太るだけ」 「重慶といったら中国でも1、2を争う美人の産地。重慶でデブの美女なんて見たことないぞ」 と、ネット上でも重慶人たちの火鍋に負けない熱い意見が交わされている。 今回の「火鍋=肥満の原因」説について、重慶の地元紙の取材を受けた重慶市火鍋協会の職員も「そんな話は、これまでに聞いたことがない」と反論。同市の疾病予防制御センターの医師も「重慶市民の肥満率は11.2%で、全国平均の11.9%を下回っている。日頃運動している市民の割合が15%と低いことを考えても、火鍋と肥満はまったく関係ないといえる」と述べている。 結局、アメリカ人の肥満の元凶とされているハンバーガーと同様、食べ物に問題があるのではなく、どんな食べ物も食べ過ぎれば太るということなのだろう。 (取材・文=佐久間賢三)火鍋は、一般的に麻辣スープとあっさり系の白湯スープの2つの味が同時に楽しめる
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「中国人デブ化の原因は火鍋」英紙報道に、本場・重慶人がブチギレ!
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