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作品名は「ヨガ」
まだ日本のメディアやブロガーには知られていないだろうと思われる、韓国珍スポライターとっておきの秘宝館を紹介したい。ソウル西部の江華島(カンファド)にひっそりと存在する、「江華セックスミュージアム」がそれだ。
ソウル中心部の新村から2000番のバスに乗り、約2時間。パワースポットとしても知られる摩尼山(マニサン)入り口のバス停で降車し、来たのとは逆方向にちょっと歩くと、畑の中に派手な垂れ幕が現れた。
その先には「GSM」と、アートな様子で壁に描かれた真新しい建物がたたずんでいる。最初は何かわからなかったが、よくよく考えたら「江華(G)」「セックス(S)」「ミュージアム(M)」の頭文字だ。
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GSM!
なお、この私設博物館は「世界春画博物館」という看板も掲げており、どっちなのかはっきりしてほしいところだが、そのGSMがあまりに神々しかったので、この原稿では「江華セックスミュージアム」に統一させていただく。
植木の間にミロのビーナスやらモアイ像やらマネキンやらが乱立する、夢があふれる不穏な小道を進む。すると奥の建物から、宮崎駿先生を連想させる、髭と眼鏡のロマンスグレーの男性がひょこっと登場。素敵な笑顔で「不思議な博物館へようこそ!」と迎えてくれた。彼こそが館長、オ・ジヨルさんだ。
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素敵な笑顔
入場料7,000ウォン(約700円)を支払い、見学を開始。1階は教室ぐらいの大きさとなっており、性をモチーフにした世界の民俗品を始め、伝統的な春画、大人のおもちゃ、性器のついたヤカンや杖、木彫りの像などが、洋の東西を問わず展示されている。
歴史的なものもチープなものもごった混ぜで、中には高そうな器やスフィンクスなどエロとはまったく関係なさそうな展示物も並び、統一感は何もない。しかし、ひとつひとつをじっくり眺めていると、宇宙から地球を俯瞰しているようでまったく飽きない。
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地球はピンク色だった!
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これでお茶飲みたくない
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「恥ずかしいの、触らないで!」とある。それにしても達筆
目の前に繰り広げられる視覚情報とは異なり、館内には映画『タイタニック』のテーマ(インスト版)らしきものが流れており、耳はさわやかだ。
次は階段を上り、2階へ。そこには1階と同じ大きさのワンフロアがあり、壁一面に世界160カ国の春画が印刷されたタイルがずらりと並んでいる。その数なんと5,000点もあり、壮観な眺めだ。
わざわざタイルにして焼かなくてもと思う一方で、行ったことのない国の個性あふれるエッチな絵に、「ウルグアイって、触手×鋼鉄スーツ×尼が好まれるのか……」など想像をかきたてられる(たぶん間違っている)。
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タイルのほかにも日本のエロ漫画、昭和なエロ本、世界のエロトランプ、ネットから拾ったような作品まで、さまざまな絵が飾られる
またこの部屋にも、セクシーなオブジェや小物が所狭しと展示されている。中でも目を引いたのは、どこかで見たことのある海賊の等身大の像(性器まる出し)や、ヨガのポーズをとるガンジーみたいな人の像(性器まる出し)。これって、大丈夫なのだろうか?
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のびるところが違う
1階と2階の見学を終えたら、館長の強烈な存在感のために思わず見損なった、博物館前の庭園へ。緑あふれる庭園には、性器が異常に強調されていたり、先っぽから水が噴き出したりと、セクシーながらもどこかマヌケな石像がものすごい密度で並んでいる。
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韓国のジブリの森と呼びたい
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わーい
博物館見学はこれで終わり。興味がなければ10分ほどで一周してそそくさと帰れる規模だが、私などは1時間以上かけてたっぷり楽しめた。ここまで過剰な、そしてどこかぼんやりとした夢の博物館を、現実のものとしてしまう館長は一体どんな人物なのだろう?
チケットブースの中で動画を見ていた館長に声をかけると、快くインタビューに応じてくれた。
博物館を作ったきっかけについて質問すると、「韓国は少子化が問題になっています。若者に性的な衝動を感じてもらうことはお国のため。一種の愛国心ですよ」と館長。エロで愛国活動とは、なんて素敵な話だろう。
さらに館長は、博物館を開業するまではソウルの有名大学に勤めており、韓国文学や詩を教えていたという。例の海賊やガンジーは、学生が造った作品だとか。
もともとは、コレクションしていた水石(観賞用の石)の博物館を造ろうと考えていた館長。しかし、日本を訪れた同僚から、「日本はセックスミュージアムが盛り上がっている」と聞き、一気に方針転換。27年かけて、世界から8,000点以上の展示物を収集した(ここに展示されていないコレクションが、さらに1,000点ほどコンテナにしまってあるという)。
大学の職を辞め、借金をして縁のなかった江華島の土地を購入し、2011年ついに開館。挑戦を続けるその行動力には、尊敬せざるを得ないものがある。
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博物館の管理のほか、農作業も営み生計を立てている。博物館入り口には、エログッズと一緒にジャガイモが売られていた
貴重な作品を紹介してもらいながら、再び館内を見学する。「これはかなり貴重な文化財」と、歴史がありそうなひとつの壺を指さしおっしゃったが、どのあたりが性的なのか、じっくり見てもよくわからない。
聞いてみると「全部エロティックだったら、飽きるじゃないですか」と館長。あの、愛国心は……。
インタビューをしている間、予想以上に多くの観光客が博物館を訪れ、そのたびに館長は定位置に戻り、「不思議な博物館へようこそ!」と笑顔を振りまいた。
こんな素敵な江華セックスミュージアムに、皆さんもぜひともカップルで訪れ、愛国心をしっぽりと育んでほしい。
(取材・文=清水2000)
●江華セックスミュージアム(江華性博物館、世界春画博物館)
住所 仁川市江華郡華道面摩尼山路657-6
営業時間 9:00~20:00
入場料 大人7,000ウォン
サイト http://www.ghsexmuseum.com/