福島の原発事故から4年。あの未曾有の大災害が、世界各国の災害用ロボット開発に大きな刺激を与えている。
米・国防総省の防衛高等研究企画局(DARPA)は、世界一の災害用ロボットを選ぶ「DARPA Robotics Challenge(DRC)」というロボット大会を企画。2012年10月から、エントリーおよび予選会が始まった同大会だが、今年6月には米・カリフォルニアで決勝戦が開催されることが決まっている。優勝賞金は約2億円(賞金合計約3億5,000万円)。予選を勝ち上がった世界トップクラスの災害用ロボットが、栄誉と賞金を求め、競い合うことになる。
このDRCは、一説では福島第一原発事故が開催の契機になったという話がある。実際、決勝が行われる会場には、福島第一原発の災害跡地が再現されるそうだ。決勝に残ったチームのロボットたちは、自動車の運転、障害物を回避しながらの歩行、梯子の上り下り、廃棄物の処理、ドアの開け閉め、ブロック塀の掘削および切断、放水、バルブ開閉など、合計9項目の性能を競う。
日本からは、エアロ、HRP2-Tokyo(東京大学)、AIST-NEDO(国立研究開発法人産業技術総合研究所)など5チームが参加。ロボット大国の称号を世界に轟かせるため、準備万端の態勢を整えている。
一方、そんな日本の背中を必死に追うのが、ここ数年、ITなど関連分野で頭角を現している韓国だ。ROBOTIS (ROBOTIS)、SNU (ソウル大学)、KAIST(韓国科学技術院)など、国内の秀才たちが集まった3チームが予選大会を勝ち上がっている。
中でも、KAISTが開発した「ヒューボ」、ロボットソリューション企業・ROBOTISが開発した「トルマン」には、ひときわ大きな注目が集まっている。というのも、DRCではハードウェアとしてどの機体を使うかは、チームごとに選択できるようになっているそうだが、25の参加チーム中、韓国勢の両機体を選んだのは合計8チームに上る。ちなみに、主催側が提供する機体を使うのは7チーム。日本の機体を選んだのは5チームとなる。ハードウェアの部分ではすでに、韓国勢災害用ロボットが一歩進んで評価を受けていることになる。
韓国でロボット開発を担当する省庁・韓国産業部は、04年度から膨大な開発費を投じ、経験を蓄積させてきた。今まで新技術の開発分野で日本に後れを取ってきた韓国は、ロボット分野でぜひとも巻き返しを図りたいところだろう。
DRCには、日本と韓国以外にも、米、独、伊、香港、中国などのチームが参加する。災害用ロボットのオリンピックともいうべき本大会で、優勝するのは一体どこの国のチームなのか。今後、需要の拡大が予想される産業だけに、見逃せない戦いとなりそうである。
余談だが、先頃、首相官邸に墜落し話題になった無人飛行機・ドローンにも、災害用ロボットとしての役割が期待されている。日本では、千葉大学の野波健蔵教授を中心に、官民一体となった国産ドローン研究が進んでいるが、韓国では航空宇宙研究院が研究・開発を進めてきた「TR-60」が、つい先日一般公開された。こちらも、中国、米国、カナダ、日本などのライバルと、市場を争っていく構えだ。
(取材・文=河鐘基)
↧