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ロウジァモーは、平たいパンに切り込みを入れて肉を詰め込んだもの
ハンバーガーといえばアメリカ生まれのファストフードだが、これが実は中国起源だったというニュースが中国人民たちを驚かせた。ハンバーガーの起源とされたのは、中国ではおなじみのストリートフードであるロウジァモー(肉夾★=★は食へんに「莫」)で、蒸しパンのようなものを指す。つまり、肉を挟んだパンという意味になる。
ロウジァモーは中国西北部にある陜西省の名物料理で、現在では中国全土で食べられている小吃(スナック)の一つ。平たいパンの中に炒めた肉の細切れが入っており、路上の屋台などで一つ100~200円ほどで売られている。小腹がすいた時に食べるにはちょうどいいおやつだ。
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ロウジァモーが売られているのは、このような屋台や簡易店舗がほとんど
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発酵させた生地を、鉄釜の内側に貼り付けて焼く。フライパンで焼くことも多い。スパイスで味付けした細切れ肉を炒め、焼き上がったパンに入れて出来上がり
このハンバーガー中国起源説、なんでもかんでも自分たちを起源にしたがる某隣国の“ウリジナル”とは異なり、中国人たちが自ら言いだしたわけではない。ハンバーガーの“祖国”であるアメリカのニュースサイト「ハフィントン・ポスト」が、4月8日付の記事で「世界で最初のハンバーガーは中国から」と伝えたことから始まっているのである。そもそも中国自身がロウジァモーを英語で「チャイニーズ・ハンバーガー」、つまり中国式ハンバーガーと呼んでおり、自分たちのもののほうが先だという意識を持っていなかったのだ。
しかし、ハンバーガー中国起源説に関して微博(中国版Twitter)では、なぜか韓国についての言及が……。
「ハンバーガーが中国起源? 韓国が黙ってないでしょ」
「『ロウジァモーの起源はキムチ餅だ』って、あの国が言いだすぜ(笑)」
「アメリカが認めたんだ。ハンバーガーは中国起源、桜は日本が起源。韓国は何もない」
それはさておき、「ハフィントン・ポスト」の記事は「世界で最初のハンバーガーは、あなたが考えているところから来たものではない。アメリカで発明されたわけでもなく、ドイツに起源があるわけでもない。そう、世界で最初のハンバーガーは中国から来たのだ」で始まり、ロウジァモーは紀元前221年から207年の秦朝の時代にはすでに現れていたとしている。そして「このチャイニーズ・ストリートフードとアメリカンスタイル・バーガーには違いがあるものの、ロウジァモーは世界で最初のハンバーガーと呼ばれている」と結んでいる。
アメリカのハンバーガーの始まりは諸説あるが、1900年ごろといわれており、歴史としてはまだ100年ちょっとにすぎない。確かに、すでに2200年以上の歴史があるロウジァモーとは比べ物にならない。
とはいえ、パンのような食材の中に肉や野菜などの具を挟んだ食べ物は世界各国にある。出現した時期はロウジァモーより遅いかもしれないが、それらがすべてロウジァモーを起源としているとするのは、やや無理がある。ハンバーガー中国起源説のニュース、もしかしたら中国政府を懐柔するためのアメリカ側の深謀遠慮……なんていうのは考えすぎか。
(文=佐久間賢三)