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盗んだお金を持たされたまま“猪籠”に入れられた男児
川崎中1殺害事件をきっかけに、少年法批判や未成年容疑者の実名報道に関する議論が高まっているが、中国の農村では、民家に忍び込んで金を盗んだ男児を村人たちが“私刑”に処して話題となっている。
事件が起きたのは3月2日のこと。広西チワン族自治区玉林市の農村で、ある家の壁を一人の男児がよじ登って2階の窓から中に入っていくのを村人が見かけた。春節休みでその家の親戚の子が遊びに来ているのだろうと思ったのだが、10分ほどすると、男児が腹部のあたりをいっぱいに膨らませて窓から出てきた。不審に思った村人が男児を捕まえると、腹に隠した黒いビニール袋の中から大量の札束が出てきた。
集まった村人たちが男児を問い詰めると、近くの別の村から来たという。ところが、住所を2回言わせたところ、2つの住所が微妙に違っている。盗みの手口からして常習犯だと判断した村人たちは、村の派出所に男児を突き出すことにした。
普通ならそれで話は終わりだが、一人の村人が「コイツはまだ未成年だ。逮捕してもすぐに釈放されちまうじゃないか!」と言いだし、ほかの者もそれに同調。自分たちの手で、この男児に懲罰を与えることにしたのだ。
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村人たちに囲まれてひざまずく。手には百元札の札束も見える
村人たちは男児を取り囲み、金を持ったままひざまずかせた。盗んだ金は2万元(約240万円)以上あるように思われた。それだけでは気が収まらず、猪籠(豚を運ぶのに使うカゴ)を持ってくると、その中に男児を閉じ込めて晒し者にした。仕打ちはさらに続き、今度は男児を村の小さな池に連れていくと、上半身を裸にして池の中に立たせた。しかもそれだけではなく、池の水に全身が浸るまでかがむよう命令したりもした。
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手前に写っている男は、男の子に水を浴びせているのだろうか……
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村のその日の気温は十数度。涙を流し、あまりの寒さに体を震わせながら許しを請う姿を見て、ようやく村人たちは男児を“釈放”した。男児を捕まえてから1時間ほどがたっていた。
翌日、その時の模様を撮った写真がネットにアップされると、ほんの数時間の間に1万7,000以上ものアクセスを記録。マスコミの注目を集めることとなった。
地元紙の取材に対し、村人の一人は「あの男児が盗んだ金は、あの一家の一年分の生活費だったんだぞ。村人はああやってあの子を教育して救ってやったんだ。そうしなければ、あの子は将来、もっと大きな盗みをすることになる」と、制裁を加えた者たちの冷酷な行為に理解を示したという。
ちなみに猪籠というのは円錐形の檻のようなカゴで、開いた下の部分から中にブタを入れて運ぶ道具。しかし昔の中国では、不貞を働いた女性を罰するため、女性をこの中に入れ、そのまま池に放り込んで殺すというリンチの道具でもあったという。
こうした行為に対し、非難の声が上がっているが、中国版Twitter「微博」には、
「法律では未成年に制裁を加えられない。こうでもしなければ、この子を教育することはできない」
「村人たちの行為は正しくないが、こんな常習犯を中国人民はみんな知っている。特に子どもは法定年齢に達していないからと釈放すると、必ずまた罪を犯す。愛で感化するというのも、子どもがここまで大きいと笑い話にすぎない。だから(村人たちの行為は)一概に批判はできない」
と、村人たちを擁護する書き込みも少なくない。
中国でも犯罪の低年齢化が問題となっており、日本同様、少年法の存在意義が問う声が高まりそうだ。
(文=佐久間賢三)