今週のグランプリ 「「大手マスコミ」の人事部長が就活女子学生をホテルに連れ込んでいた!」(「週刊文春」5月23日号) 注目記事 「マイナンバー制度 実は巨額利権だった」(「週刊現代」6月1日号) 「静かなブーム、女性向けAV」(「週刊朝日」5月31日号) 「NHK野球解説『武田一浩』の馬乗りDV診断書」(「週刊新潮」5月23日号) 「『八代亜紀作』の絵は私が描きました」(「週刊文春」5月23日号) 「食卓に米国産『危なすぎる食材』」(「週刊新潮」5月23日号) 「裁判所が検察・警察のいいなりでどうすんの!」(「週刊現代」6月1日号) 「ストレス解消に“涙活”してみる?」(「週刊朝日」5月31日号) 今週の発表をする前に、私の個人的な趣味で恐縮だが、ポストの「謎の美女YURI」をずっと注目してきたことは、この欄で何度か書いている。 そのYURIが今週、初めて「衝撃の告白」をしているのだ。それによると長崎生まれで、20歳の時に上京してきて、いろいろアルバイトをやり、夜のお店もちょっとだけやったとある。現在27歳の一般人。ここで見逃せないのは、アサヒ芸能でAV嬢だと暴露された件について「アダルトビデオですか……知りません。私じゃないと思います」と曖昧に否定していることだ。 私が購入したAVビデオの女性は偽物なのか? アサ芸さん、早速、事実関係を確認してほしいね。 現代とポストは、よほど60歳以上の読者が多いらしい。「死ぬまでSEX、生涯現役 60歳超えた恋は不倫じゃない!」(ポスト)「60歳過ぎたら遠慮はいらない あの素晴らしいセックスをもう一度!」(現代)と、じいさんたちに盛りをつけようと、大特集を組んでいる。 恋とかセックスは「秘すれば花」とまでは言わないが、こう大声で「やれ、やれ!」と連呼させると、いささかげんなりしてくる。そのうち袋とじで「還暦セックス」特集を組むんじゃないだろうか。見たかないね。 さて、みなさんは“涙活(るいかつ)”って知ってました? 泣きたい人たちが集まって意識的に涙を流す会があるという。こういう新情報を得るのも、週刊誌を読む楽しみである。 その会を主催している、自称「涙のソムリエ」嵯峨崇司さん(31)が名付け親だという。朝日によると、この日は宮沢賢治の詩「告別」の朗読を聞いたり、泣ける動画を見て、ともに泣くのだそうだ。参加した40代の半導体のエンジニアはこう言っている。 「泣くことで自分を出せると思いました。知らない人たちだから気にせず、それに周りの人たちが泣けば雰囲気に流されて泣けるのでは、と参加しました」 泣くことは若さの秘訣でもあるという。ホントかいな? 泣ける映画として、韓国映画の『建築学概論』『サニー 永遠の仲間たち』を挙げている。また、男泣きできる本として『ほかならぬ人へ』(白石一文)、『そうか、もう君はいないのか』(城山三郎)、『悼む人』(天童荒太)なども紹介している。 今の世の中、泣きたいことがいっぱいあるというのに、それに気づかない人が多いということなのだろうか。 現代の、株が上がる、株が上がると連呼する特集に私はまったく興味がないが、「PCなりすましネコ男事件」をしつこく追及する姿勢には拍手を送りたい。 今回が「連続追及第11弾」。元東京高裁の判事・木谷明氏がこう告発している。 「4回の逮捕に2回の起訴が行われ、片山(祐輔)君(30歳)は2月10日に逮捕されてから、すでに100日間も身柄を拘束されています。検察の言い分を鵜呑みにして、拘留を認めているのは裁判所です。その対応に、私は心底落胆しています。 しかも裁判所は、せめて母親や弟さんだけでも会わせてやってほしいという弁護人の申し出も棄却しました。『罪証隠滅のおそれがある』というのが、その理由です。検察官は『接見を許せば、被疑者が(家族などに)真犯人を装ったメールを送信させるおそれが高い』と主張しています。検察の言いなりになって、裁判所は家族との接見さえ認めていないのです。 しかし、母親や弟さんとわずかな時間、しかも看守立ち合いの上で接見させることで、証拠隠滅工作などできるのでしょうか。とくにパソコンにまったく詳しくない母親に、そんなことができるわけないではありませんか。裁判所が本気で証拠隠滅のおそれがあると考えているのだとしたら、その常識を疑わざるを得ません」 木谷氏は今は弁護士で、片山氏の弁護も引き受けている。その立場からの発言だが、十分うなずける言い分である。 木谷氏は裁判官の不甲斐なさをこう嘆く。 「(中略)裁判官の多くは、検察が違法行為に手を染めるなどと考えていないのです。 しかし、捜査機関は時として『違法な捜査』に手を染めることがあります。捏造は論外としても、これまで検察は被告人に有利な証拠を隠してきました。(中略)ただ、その問題に入り込むと、警察、検察という巨大な国家機関に対して、裁判所が真正面から大戦争をしなければなくなる。それが厄介だということで、裁判官が『捜査の違法性』という根本的な問題を避けているのではないかと、私には思えます」 検察と裁判官は一体。これが冤罪を生み出す悪の“温床”になっていることは、間違いない。早く全面取り調べの可視化をするべきである。 お次は新潮の記事。文春の向こうを張って、危ない食材は中国だけではない、アメリカのほうがよほど危ないという特集を巻頭で組んでいる。 「日本人視察者が目を疑った『牛肉』飼育現場は糞尿まみれ」では、アメリカの飼育現場や食肉処理場がいかに汚いかを山田正彦元農水相に語らせている。 「米国産『牛乳』輸入禁止24年で欧州はホルモン依存性ガンが減少」では、北海道対がん協会細胞診センター所長の藤田博正医師がこう言っている。 「米国産牛肉には、国産に比べると赤身で600倍、脂身で140倍のエストロゲン(女性ホルモン)が含まれていたのです」 エストロゲンは、乳がんや子宮体がん、前立腺がんなどの「ホルモン依存性がん」の危険因子である。日本におけるホルモン依存性がんの発生率は1960年代と比べて5倍になっている。それと比例するように、牛肉消費量も同じく60年代比で5倍に増えていて、そのうち約25%は米国産牛肉と見られているという。 「カリフォルニア産オレンジに強烈なる『防カビ剤』」では、農薬や殺虫剤の主原料でもあるOPPは発がん性が、TBZには妊婦が多量に摂取すると奇形児を出産する恐れがあると指摘されている。そのため約40年前には、当時の厚生省がOPPなどを使用した柑橘類の輸入を自粛するように警告していた。 だがその後、アメリカ側がOPP使用容認を強く迫ってきたため、日本は食品添加物として認可してしまったそうである。 日本人の好きな養殖サーモンも危ない。衝撃的なレポートがコーネル大学など米国の名門大学の研究者によって05年に発表されたという。それは「養殖鮭と天然鮭を消費する際のメリットおよび危険性に関する定量分析」というタイトルのレポートである。そこにはこうあるという。 「米・メイン州、ワシントン州の養殖サーモンを食べるのは年に3回から6回に留めるべきだ」 「養殖の鮭で何より危ないのが脂身です。畑などに撒かれた農薬や殺虫剤は、川の流れに乗って沿岸部に行き着き、養殖場の鮭の体内に取り込まれる。この時、化学物質を最も吸収しやすいのは脂肪分なのです」(食政策センター ビジョン21の安田節子氏) そのほかにも「袋を開けたらカビだらけだった『カリフォルニア米』の有毒性」「米通商代表部が『大腸菌付着に問題なし』と冷凍フライドポテト」などがある。 TPP加入よりも先に国内の食糧自給率を上げる政策をとらないと、日本人の体は外国食材でボロボロにされそうだ。 八代亜紀という歌手、昔は好きではなかった。ただ、高倉健と倍賞千恵子が出ていた映画『駅 STATION』で、雪深い汚い居酒屋で、2人が酒を飲んでいるところに流れる紅白歌合戦の「舟歌」は絶品である。 最近では、絵を描いたり本格的なジャズを歌う姿がいいと思うようになった。 彼女の絵はフランスの「ル・サロン展」にも入賞しているというが、その彼女に「盗作疑惑」が起きていると文春が報じている。 美大系の学生Aさんがこう語る。 「私が最初に八代さんの絵を描いたのは、四、五年前のことです。当時、私は首都圏にある美大受験専門の予備校に通っていました。ある日、その予備校の職員Xさんから、授業が終わった後に別の教室に来るように指示されました。指定された教室へ行くと、私を含めて、だいたい十人くらいの生徒が集められていました。そこで『猫の絵を描くように』と指示され、油絵の紙にアクリルで猫を描いたのです。ちなみに、私は油絵を専攻しているわけではありません。油絵専攻だけでなくいろんなクラスの生徒が集められていたので、不思議に思いました。それに、なぜか絵を『完成させないで』といわれたこともありました。こうして描いた絵はすべて回収され、私たち学生の手元には戻ってきませんでした。 こうした異例ずくめの授業は何度かあり、他にも『麦わら帽子』や『紙風船』を描いたことも覚えています。授業の中では八代さんの名前は一切出ませんでした」 八代の絵のモチーフは猫や麦わら帽子が多いという。この話が事実なら盗作とはいわないまでも、いささかモラルに欠けると言わざるを得ないかもしれない。 だが「ル・サロン展」そのものが、なんの権威もないものだそうだから、目くじらを立てることでもなさそうだ。美術史家で神戸大学大学院准教授の宮下規久朗氏がこう言う。 「本物の美術ファンは八代氏の絵には見向きもしないでしょう。演歌ファンが有り難がるだけで、彼女の絵はもともと予備校生のレベルと変わらない素人の作品なのです」 素人の絵をもて囃したメディアの目が節穴だったということだ。 夫婦ゲンカものは週刊誌の“華”であるが、新潮の元プロ野球投手・武田一浩(47)の話には驚いた。武田の奥さん(35)がこう語っている。 「いつの間にか、ナイフは叩き落とされ、私は仰向けに倒されていた。夫は、私に馬乗りになり、髪の毛を掴んで何度も何度も頭を床に打ちつけたり、首を絞めたりしました。その横では、娘を抱いた夫の妹から“迷惑なんだよ!”などと罵声を浴びせかけられた。私が嘔吐したら、2人は“コイツ、ゲロ吐きやがった”とあざ笑いました」 これが事実だとしたら、尋常な暴力ではない。 彼女が警察の勧めで取得した診断書には、頸部捻挫、両上肢、大腿部打撲傷などで、全治3~4週間と記されているという。 武田はプロ野球選手としては申し分のない実績の持ち主である。1988年、明治大学からドラフト1位で日本ハムファイターズに入団。その後福岡ダイエーホークス、中日ドラゴンズ、読売ジャイアンツを渡り歩き、12球団全てから勝利を収める史上3人目の快挙を成し遂げている。 ただ一匹狼の面があり、気性が激しいので、自分が納得できなければ誰であろうと反発していたと、スポーツライターの永谷脩氏がいっている。 武田は8カ月になる子どもを連れて家を出てしまったそうだが、武田の言い分は、かなり違っている。 「DV? 僕の方が被害者です。彼女はお酒を飲むと暴れて、噛み付いてきたりしました。僕が子供を連れて家を出たのは、彼女と一緒にいると子供が危険だからです。ミルクも与えているし、おむつも替えている。ちゃんと面倒をみています。ただ子供のことを考えれば、離婚するよりも、やり直せないかと考えていますけど……」 奥さんのほうは弁護士を立てて離婚調停を申し立てる予定で、加えて、暴行の刑事告訴の準備も進めているという。 どうやら、このバッテリーの修復は難しいようである。 女性向けAVの売れ行きが好調だという。3,000本売れればヒットいわれるAV業界の中で、1万本以上のヒット作品を出しているそうである。 ソフトで女性の気持ちに寄り添った作りは当然だが、男優が向井理を思わせる甘いマスクと清潔感があるというのだから、なるほどと思う。 朝日の山岡三恵記者が突撃取材している。 「業界初の“専属男優”である一徹は、女性向けAV人気の火付け役。有名大学法学部を卒業後、公認会計士になるべく専門学校に通う勉強漬けの中で、アダルトサイトで見つけた男優募集に応募し、業界入り。既婚者で、パパでもある」(朝日) 撮影現場での注意事項が興味深い。 「女優に対しては、<(男女とも)オーバーな『イク~!』はNG。イキそうなときは『気持ちいい』や『もうだめ』><いきなり舌を出すキスはNG><男性の乳首をつままない><あえぎ声はいつもより抑え気味に> などなど。一般女性が共感しづらい『アバズレ感』『下品に見える行為』はほとんどNGなのだ。男優に対しても、 <パンツの上からでも激しく触らない><キスは唇だけでなく顔面、首筋、もも、指など、至るところに><淫語は言わない> そして、最大の特徴はコンドームをつけるシーンが必須なこと。当初は啓蒙的な意味だったが、男性が彼女のことを考える優しさが伝わってきた、と好評だったという」(同) 現代やポストのセックス記事よりためになる。 5月9日に納税や年金などの情報を国が一元管理する「共通番号(マイナンバー)制度」法案が衆院を通過したが、大きな話題にはならなかった。 国民ひとりひとりに番号を振って年金や納税、家族構成などの情報を管理するため、政府の試算によればシステム構築に3,000億円程度の税金が必要になる。法案が成立すれば2016年1月から施行されることになるのだ。 2002年に導入された「住民基本台帳ネットワーク」(住基ネット)も同じようなものなのに、なぜ必要なのか? 現代が「ITゼネコン(大手ITシステム会社)の巨大利権だから」だと報じている。 元経産省官僚の古賀茂明氏が住基ネットの現状をこう語る。 「数々の反対を押し切り、システム構築に約400億円もかけて導入したけれど、今に至るまでほとんど使われていません。交付率は10年経った今でもわずか5%(!)。にもかかわらず、年間百数十億円もの維持運営経費をつぎこんでいます。これに輪をかけた壮大なムダが、今回のマイナンバー制だと思ってください」 元財務官僚で嘉悦大学の高橋洋一教授も、住基ネットをそのまま使えばカネがかからないのに、やるのは「ITゼネコン」のおまんまのためだといっている。 「米国では、日本のマイナンバーに相当する社会保障番号(以下、SSN)が広く普及している。SSNには、名前・住所・生年月日・家族構成・メールアドレスなどの個人情報が入っており、納税などの際公的機関で使われるほか、就職やクレジットカードの申し込み、保健、医療サービスなど、さまざまな分野でその人を証明するIDとして使われてきた。その結果、番号の窃盗による詐欺などの被害が、なんと年間5兆円にも達しているのだ」(現代) 被害もそうだが、個人情報を国家だけが握ってしまうことへの危機感が、日本人にはない。そこが一番危険だ。 今週のグランプリには文春のスクープを挙げる。グランプリが出るのは久しぶりである。この記事、興味を持って読み始めたが、どうもよくわからない。 昨年暮れ、有名大学に通うA子さんは、企業説明会で共同通信総務局兼人事部長だった52歳の今藤悟氏と知り合い、作文の添削をしてあげると呼び出された。 夕食をともにし、その後、酒を飲んだのだろう。終電がなくなり、タクシー代もなかった彼女は、男が「ホテルを取ってあげる」という言葉を信じて(?)、ホテルの部屋に入ったところで、関係を迫られたというのである。 ここにはどこまでコトが進んだのかは書いていないが、彼女は男の卑劣な行為が許せない、訴えたいと思い、男と会って話したが平行線に終わり、彼女は文春に持ち込んだのであろう。 その後、今藤は上司にこのことを告白し、部署から姿を消してしまうのである。 本人も会社側も、彼女との件を知った上での処分なのかと思うと、文春のインタビューに共同通信の三土正司総務局総務は、その件は承知していないと答えている。 それに「単なるウワサでいちいち調査します?」とまで言ってのけているのである。 今藤のほうは「合意の上」とでも上司を言いくるめているのであろうか。文春は実名まで出して書いているのだから、相当な裏付けがあるはずである。 それにしては大通信社の対応がはっきりしないのはなぜなのか。こうしたウワサが出ること自体、メディアにとって由々しきことなのだから、はっきり調査をして事実関係を調べるべきであろう。 こう思っていたら、今日(5月21日)のasahi.comにこの記事が出た。 「共同通信社は20日、就職活動中の女子学生に不適切な行為を行ったとして、今藤悟・前人事部長を懲戒解雇とし、監督責任がある石川聡社長を報酬減額とするなど計6人の処分を決め、発表した。 同社によると、前人事部長は同部長だった昨年12月、就職活動中の女子学生と個別に接触し、作文指導したのをはじめ、不適切な行為をしたという。社長らその他の役職員は、前人事部長への管理監督責任が問われた。前人事部長については、週刊文春5月23日号が「企業説明会で知り合った女子学生を呼び出し、ホテルに連れ込んだ」などと報道。共同通信社は「『不適切な行為』の詳細は説明できない」としている。(中略) <共同通信社の伊藤修一専務理事の話> 今回の事案を極めて重く受け止めており、二度とこのようなことを起こさないよう職員の規律維持に全力を挙げ信頼回復に努めます。これまで公表してこなかったのは当該学生の就職活動に影響がないよう配慮したためです」 明らかに伊藤専務理事は虚偽の発言をしている。文春が報道しなければ、ウヤムヤにすまそうと思っていたに違いない。三上総務は「ウワサだ」と断言しているのだ。 比較的良心的だといわれる共同通信でさえ、この体たらく。メディアの信用はどこまで落ちれば底を打つのか。暗澹たる気持ちになる。 (文=元木昌彦) ●もとき・まさひこ 1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。「週刊文春」5月23日号 中吊り広告より
↧
共同通信人事部長が就活学生をホテルに連れ込み! 「文春」スクープに、上層部のお粗末すぎる対応
↧