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「想像力」こそ視聴者の最大の武器! タモリイズムあふれる『烈車戦隊トッキュウジャー』

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烈車戦隊トッキュウジャー|テレビ朝日
 『笑っていいとも!』(フジテレビ系)が終わり、いわゆる「タモロス」に陥る視聴者が続出している中、ほのかにタモリイズムを感じさせてくれる番組がある。それが、特撮番組『烈車戦隊トッキュウジャー』(テレビ朝日系)だ。  戦隊のモチーフは、タモリが大好きな「電車」。そして彼らの武器は、タモリ最大の趣味であり芸の根幹を担う、「妄想」すなわち「イマジネーション力」である。 「世界は、目に見えるものが全てではない。夢見る力、想像する力、すなわちイマジネーションを持つ者だけが見ることが出来る世界がある。イマジネーション! それは不可能を可能にし、世界に光を灯す、無限の力」  「電車」+「妄想」。ほかにも「なりきり」が好きなキャラが出てきたり、「やる気」に関するエピソード(その駅名が「無気力坂」。タモリといえば「坂」だ)があったり、タモリの盟友である関根勤が「イマジネーーーション!」と叫ぶ「車掌」役でレギュラー出演していたりと、そこかしこにタモリのにおいを感じさせるのだ。  脚本は小林靖子。いま最も忙しい特撮作家のひとりだ。近年では、北川景子を輩出した実写版『美少女戦士セーラームーン』(TBS系)、佐藤健主演の『仮面ライダー電王』、そして松坂桃李主演の『侍戦隊シンケンジャー』とヒット作を手がけ、『仮面ライダーオーズ』『特命戦隊ゴーバスターズ』(以上、テレビ朝日系)と立て続けに執筆を続けながら、同時にアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』や『進撃の巨人』などの脚本も務めている。  モチーフを巧みに生かした設定やネーミングが秀逸で、たとえば本作では、ヒーローに変身する時に「変身いたします。白線の内側に下がってお待ち下さい」と、実際に白線が現れ、敵が近寄れなくなる。よく言われる「なんで変身している時に攻撃しないの?」という疑問に、ちゃんと答えを用意しているのだ。「乗り換え」といって、戦闘中、お互いのスーツの色を交換することもできる。かつての東映映画『新幹線大爆破』のパロディを関根勤のモノマネ付きでやったりと、遊び心も満載だ。そしてなんといっても、魅力的な複数のキャラクターを引き立てる群像劇が、小林作品最大の特長だ。 「見えるんだよ、最初からずっと。俺にはハッキリ見える。お前に勝ってる俺が!」 と、ポジティブな想像力で無鉄砲な性格のトッキュウ1号(レッド)のライト(志尊淳)が、一応のリーダーであり主役。だが、ライトを「戦闘リーダー」と称し、それ以外の4人も「サポートリーダー」「世話焼きリーダー」「影のリーダー」「なりきりリーダー」など、そのときの状況次第でリーダーが変わるという設定通り、それぞれに見せ場が用意されている。  戦隊のメンバーだけではない。彼らをサポートする車掌(関根)と、その車掌の「右腕」で、文字通り車掌の右腕に腹話術の人形のようにいる謎の存在「チケット」。そして、客室販売員の女性型ロボット「ワゴン」といった個性的な面々も、愛さずにはいられない。  また、優れた特撮モノのバロメーターのひとつである敵側の魅力も十分だ。『トッキュウジャー』の敵は、「シャドーライン」と呼ばれる悪の帝国。「レインボーライン」という既存の路線の駅を乗っ取り、その町を支配し、勢力の拡大を図っている。「この烈車は『神隠し』経由、『餓鬼捨て山』行きです」などと、駅を乗っ取った時に付けられる駅名も面白い。 「届けにきたぞ、棺桶を、お前の入る棺桶を。お代はいらない、ただその代わり、お前の命をいただこう♪」 と、棺桶を引きずりながら歌うシャドー怪人「チェーンシャドー」は完全にホラー映画の域にあるような怖さだし、幹部のひとりであるシュバルツ将軍はどこまでもダンディでカッコいい。中でも魅力的なのは、そのシュバルツを一途に敬愛するグリッタ嬢だ。ずんぐりした巨体と醜い顔つきだが、その健気な性格と振る舞いはチャーミングそのもの。そのキュートさは、今からトッキュウジャーに攻撃されて傷つく姿を想像して憂鬱になってしまうほどだ。  常に前向きなイマジネーションを駆使するライトを中心に、『トッキュウジャー』はとても明るく楽しい戦隊モノだ。しかし、どこか物悲しさが漂っている。それは、「死」のにおいにほかならない。トッキュウジャーの5人はもともと、幼なじみらしい。「らしい」というのは、5人には断片的な記憶しかないからだ。 「あなたたちは死んでるも同然」 と、車掌の右腕・チケットが口を滑らせている。  その言葉を元に、自分たちの記憶がなく「死んだも同然」なのは、シャドーラインに乗っ取られた町の住民ではないかと推測するトッキュウジャーたち。その推論に対して、車掌とチケットは同時に答えるのだった。 「当たりです!」 「ハズレです!」  賛成の反対。答えは藪の中。けれど、これでいいのだ。  ライトは「覚えていない町を探して後戻りしたくない」と言う。 「トッキュウジャーやって、前に進んで、進んで、進んだらその先に俺たちの町がある気がしてる」  これこそまさに、過去に執着しないタモリイズムだ。  もちろん『トッキュウジャー』=タモリイズムなんて、最初から最後までこじつけだ。けれど、それこそが「イマジネーーーション!」ではないか。想像力のある者にしか「レインボーライン」は見えない。それと同じだ。作品をモチーフにして、こじつけたり見立てたりしながら、妄想することこそが面白さのひとつだ。そんなふうに「想像力」を働かせてみることこそ、僕たち視聴者の最大の武器なのだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

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