今週の注目記事 第1位 「独占スクープ!『秋葉原連続通り魔事件』そして犯人(加藤智大被告)の弟は自殺した」(「週刊現代」4月26日号) 第2位 「猛妻に金を献金した『渡辺喜美代議士』の弱点」(「週刊新潮」4月17日号) 第3位 「最近増えている中学生の息子と一緒に入浴する母親 あなたはどう思いますか?」(「週刊ポスト」4月25日号) 第4位 「安倍を操る『財務省7人のワル』をご存じか」(「週刊現代」4月26日号 ワースト・第1位 「独占 愛は憎しみに変わった 小保方晴子が大反論!」(「週刊現代」4月26日号) 見たか、この脚! そう叫びたくなった「桜花賞」でのハープスターのド派手な勝ち方だった。終始最後方で四角大外を回っての勝利。他馬よりも20~30メートルぐらい余計に走っているのではないか。それでも粘るレッドリヴェールをかわしての圧勝劇は、オークスはもちろん、秋のフランス「凱旋門賞」が楽しみになってきた。 このレース、牝馬は古馬と4~5キロ差、3歳牡馬とも1.5キロ差ある。日本競馬界の悲願を実現してくれる恐るべき力を持った牝馬が出てきたものである。 さて、リケジョのハープスターと思われていた小保方晴子さんだが、残念ながら、自ら弁明記者会見を開いたものの、“栄光”を取り戻すことはできなかった。 だが、これから4月9日は「小保方晴子記念日」と呼ばれることになるのではないかと思えるほど、この会見は日本中の注目を集めた。3時間近くにわたった会見の印象をひとことで言うと、「女はすごい」に尽きる。彼女に比べると、先に謝罪会見した佐村河内守氏などかわいらしくて、抱きしめてやりたくなる。 佐村河内氏も髪を切ったりひげを剃ったりして“好印象”をアピールしようと一生懸命だったが、気に入らない質問に声を荒げるなど、腹が据わっていなかった。 小保方晴子は違った。この日のためにシェイプアップしたかのような引き締まった(やつれた?)小顔。薄めの化粧に地味なスーツだが、その分、彼女の顔はテレビ映えする。髪は、ホテルの部屋に美容師を呼んでセットしてもらったそうだ。 ポストの「オボちゃんの涙は本物?『STAP細胞あります会見』を精神鑑定のプロほかが『完全解読』」によると、ヘアメイクアップアーティストの三橋ただし氏がこう分析している。 「頬にはピンクのチーク、唇にはグロスまで入れて、完璧なメイクが行われていました。しかし、よく見るとそれだけではない工夫が懲らされています。肌の色に近いチークとアイシャドーを使って、あえて血色が悪く高揚感のない顔を作っているんです。プロの手によるものなのは間違いない。“悲劇の女性”という印象を高めるメイクです」 出陣前の身支度としては完璧である。 最初の6分間に及ぶ謝罪は、事前に会見に来た報道陣には配られていたらしいが、原稿を読まずに話したのには“感動”させられた。 彼女が話している間、私を含めた多くの男は「STAP細胞なんてウソでもなんでもいい、許しちゃう」、そう思って見つめていたのではないか。 どうやら会場に来ていた大勢の報道陣も彼女の色香に当てられ、肝心要のことを聞かずに枝葉末節の質問に終始していた。 彼女が説明責任を果たさなくてはいけなかったのは、「STAP細胞作りに成功したのか否か」であったはずである。そして、彼女は「STAP細胞作りには200回以上成功している」と、断言したのである。 いつでもどこでも、とは言わなかったが、場所と設備があればやってみせると言い切ったのだ。 そこを衝かずに「週刊誌に不適切な関係があると書かれていますが」などというしょうもない質問をぶつけるだけで、彼女が言いよどむと、佐村河内のときのように「さっきそう言ったのに、前言を翻すのか!」という突っ込みもなく、インタビューの常道である圧迫的な質問もほとんど出なかったのは、不甲斐なくて聞いちゃいられなかった。 涙と笑いを振りまいたオボちゃんのショータイムは、肝心要の疑問は残されたまま、彼女の絶品の演技の余韻を残したまま幕を閉じてしまったのだ。 ポストによれば「驚くべきことに『Yahoo!ニュース』の意識調査では、『小保方リーダーの説明に納得したか?』という問いかけに対し、『納得した』との回答が43.9%にのぼり、『納得できなかった』の32.4%を大きく上回った」(9日22時現在)という。 彼女の“演技”が素晴らしかったという証左であろうが、やはりポストで表情分析アナリストの工藤力氏は、彼女の視線に注目したという。 「人は作り話をする際、無意識に目が泳いだり、目線を逸らせたり、下を向いたりするものです。しかし会見での小保方さんは、決してそうせず質問者をずっと見つめていました。このことからも、彼女は自分の発言について良心の呵責を感じていないことをがわかります。これには2つの可能性が考えられる。『まったくウソついてない』か、『自分の言ってることはウソではない』と信じ切っているか。前者ならよいのですが、後者であれば、大風呂敷を広げる言動をしやすい『演技性パーソナリティ』の可能性もあります」 文春、新潮は会見が締め切りに間に合っていないので、会見に関する記事がないのは致し方ないが、現代の巻頭大特集「独占 愛は憎しみに変わった 小保方晴子が大反論!」はタイトルに偽りありである。 新聞広告でもド派手に打っていたので、9日の会見後にインタビューに成功したのかと思って読んだが、なんのことはない、会見の要約である。 現代は変則発売(4月11日発売)である。締め切りギリギリだが、フライデーとともに、会見後最初に出る週刊誌だから、派手に打ちたい気持ちは分かる。しかし、「独占」はないだろう。 サブタイトルに「理研のドロドロ内幕を、すべてバラす」とまであるのだから、立ち話でもいいから、何か聞けなかったものか。ワーストにした由縁である。 しかし、今週の現代は頑張っている。現代の「安倍を操る財務省7人のワル」にも注目。現代によれば、早速、消費増税関連の倒産第一号が出てしまったというのだ。 「新潟県のスーパー河治屋です。'55年創業の老舗ですが、ここ数年は大型スーパーの台頭で苦しんでいた。そこへきて増税となり、新税率に対応する新型レジの設備投資ができない状況にも追い込まれ、最終的に資金繰りに行き詰って新潟地裁から破産手続きの開始決定を受けた」(同社関係者) 「4月1日から消費税が5%から8%に増税され、全国で悲鳴が止まらない。『4月1日~6日までの国内18店における売り上げが前年同日対比でマイナス21.8%になりました』(高島屋広報・IR室)、『4月第1週の週末の売り上げは前年比1割減でした』(関西の大手量販店の広報担当者)というように、各地の店から客がゴソッと消えた」(現代) しかしその最中、安倍晋三首相は5日の土曜日に日本橋三越本店を訪れた。佃煮、靴など合計約4万円(内消費税分は約3000円)の買い物をして消費する姿勢をアピールしたが、『消費税がだいぶ高くなったんだという実感があった』などと呑気なことを言ったため、『いまさら言うな』『庶民は三越に行かない』などと猛反発を受けているようである。 現代は、その上、財務省OBの衝撃発言が波紋を広げているという。 「前事務次官の真砂靖氏(78年入省)が、2月末に地元の和歌山県内で講演した際に、消費税の10%への引き上げについて『経済がよほどのことにならない限り、やらないといけない』と語った」 だが、そんなことはできないだろうと高をくくっていると大変なことになるというのである。 主税局長を務める田中一穂氏(79年入省)は最近、周囲にこんな持論を披露しているというのだ。 「ポイントは来年1月の通常国会。安倍首相は年末までに10%増税の可否を判断するが、仮に『否』と判断を下せば、消費増税法案改正のための『消費税国会』と化す。しかし、この国会は集団的自衛権関連の改正案を通す国会にもなる可能性があるので、『消費税国会』にしてしまうと、安倍首相がやりたい憲法改正が大きく後退することになりかねない。だから首相は10%を容認するはずだ」 頭がいいというか悪賢い連中の集まりだから、国民はよほどしっかりしないと騙され、気がついたらあっという間に消費税が10%になっていたなんてことになりかねない。 一方で、憲法改正しなくても戦争のできる国にしようと企む安倍首相にとって、やっかいなことになりかねない「動き」が出てきた。 「戦争の放棄を定めた憲法9条をノーベル平和賞に推した『憲法9条にノーベル平和賞を』実行委員会(事務局・神奈川県相模原市)に、ノルウェー・オスロのノーベル委員会から推薦を受理したとの連絡があり、正式に候補になったことがわかった。連絡はメールで9日夜、実行委に届いた。『ノーベル委員会は2014年ノーベル賞の申し込みを受け付けました。今年は278の候補が登録されました。受賞者は10月10日に発表される予定です』との内容だ」(4月11日付のasahi.comより) 事務局の岡田えり子さん(53)は「受理されてうれしい。受賞者は個人か団体となっているが、受賞者を日本国民としたことを委員会は受け入れてくれた。これで日本国民一人一人が受賞候補者になった」と話している。 この推薦運動は、神奈川県座間市の主婦、鷹巣直美さん(37)らが始めたそうだ。推薦資格のある大学教授、平和研究所所長ら43人が推薦人になり、2月1日までに集めた署名は2万4887人。この署名を添えて委員会に送っていた。 もし受賞となれば、日本人全部が受賞するということになる。そうなれば、改憲などできるわけはない。こうしたことを含めて、これから「反改憲」に向けた面白い動きが始まりそうである。 お次は、ポストの興味深い記事。最近、中学生の息子と一緒に入浴する母親が増えているというのだ。 「次の数字は、15歳(中学卒業)までに“あること”を経験する男性の率である。 ◆1981年 約80% ◆1999年 約73% ◆2011年 約50% 急速な下落傾向を示すこの数字は一体何か。“あること”とは、『精通』のこと。すなわち、夢精かマスターベーションを経験しているかどうかを示してる。日本性教育協会『第7回青少年の性行動全国調査報告(11年度)』によれば、中学卒業までに射精を経験しない男子が半数にも達しているというのだ」(ポスト) その原因が母親にあるというのだ。50代の男性A氏がこう話している。 「一人っ子の息子は、いまだに妻と一緒にお風呂に入っている。中学入学の時に“そろそろお風呂は別に入ったほうがいいんじゃないか?”と妻に言ったが、妻は“なんで? 順番を待ってるより効率的でしょ”と平気な顔。息子も異性を意識する年頃だからと話したら、“親子なんだからいいじゃない。そんなことを気にするあなたのほうがおかしい。いやらしい”と反論された」 だが、性教育に詳しい一橋大学非常勤講師の村瀬幸浩氏は、こう警告を発している。 「マスターベーションを母親が叱るという話は昔からよくありますが、最近では、“母親が息子のマスターベーションを手伝ってあげている”という話を耳するようになりました。こうした母親は寂しさや人間関係の希薄さを埋めるために、子供と密着し、その一体感のなかで癒されることを求めている。本来なら夫との関係を改善すべきなのに、方向が子供に向かってしまっている。その意味で夫の問題でもあるのです」 夫の問題だと言われてもな~。また、先の調査の中に別の興味深いデータがあるという。 「母親が専業主婦の男子高校生のセックス経験率は、05年の約23%をピークに急落し、11年には約8%にまで下がった。この下げ幅は、共働きの場合や、女子高生の場合と比べると、格段に大きい」 専業主婦が草食男子を作る、というのである。 町沢メンタルクリニック院長で精神科医の町沢静夫氏は母親の過干渉で、息子はここまで母親を頼りにしているというのだ。 「なかには母親がセックスカウンセラーのようになってるケースもある。母親相手に『あのコと手を握ってもいいのかな?』とか『あのコとキスするにはどうすればいいの?』といった恋愛相談をする男子は珍しくない。背景にあるのは、母親の巨大な愛。いまの母親は夫とつながるよりも、子供のほうに精神的につながっている。(中略)息子のほうもそんな母親の巨大な愛にくるまっているうちに性的興奮が鈍磨していく。射精年齢が上昇しているのも頷けます」 では、女性のほうはどうなのか。先の調査では、高校生女子も大学生女子も、ここ15年ぐらいの間は、自慰の経験率に大きな変化はないそうだ。 「女性の実際の性交経験は減っている。先の調査でもセックス経験のある大学生女子は、05年の約60%をピークに、11年には約45%に減少している。この落差は男子大学生に比べても大きい」(同) こうした傾向を、村瀬氏は次のように見ている。 「いまの女性は昔と違って、男性に頼って生きていく必要がない。自分で自分の人生をつくり、経済的に自立して生きていくこともできる。だから、性欲はあっても、男性との恋愛やセックスへの関心が高まらず、自慰で十分という感覚になっているのでしょう」 これでは、少子化に歯止めがかからないのも無理はない。 さて、小保方さんと比べては彼女に失礼だし、佐村河内氏以下といってもいいほど見苦しかったのが、渡辺喜美みんなの党代表の辞任劇である。新潮のこの記事が第2位。 追い詰められると「秘書が秘書が」「妻が妻が」といって逃げるのが政治屋の常だが、この御仁は天下に鳴り響いた恐妻家だから、言い逃れにもなりはしなかった。 新潮で、吉田嘉明DHC会長が8億円を渡辺代表に貸したことを明かし、見苦しい言い逃れをする渡辺代表に「辞任せよ」と迫ったとき、この欄で、私はこう書いた。 「そこで新潮はこういう穿った見方をしている。『先にも記したが、吉田会長の下にまゆみ夫人から“離婚メール”が届いたのは、会長が5億円を振り込んだ当日。渡辺代表から5億円の資金援助を求められたのは、その2日前だという。いや、まさか慰謝料を準備しようとした、なんてことはあるまいが』万が一、女房に離婚を迫られ、カネで歓心を買うために会長に無心したのであれば、会見で8億円の使途を聞かれ、『生きていく上で必要な諸々費用として使った』という渡辺代議士の説明も、それなりに合点がいくのだが」 どうやら、これが図星らしい。記者会見で渡辺代表が、カネは手元にはない、私名義の個人口座ではなく妻の口座に一部を入れていたと「告白」し、吉田会長から借りた5億円のうち、党に半分を貸し付け、半分はまゆみ夫人の口座に移されていたことが明らかになった。5億円が振り込まれたのは2人が離婚の話し合いをしていた頃だから、夫人から慰謝料を払えと求められて、それに使ったのではないかと推測しているのだ。 順を追うと、吉田氏から5億円が振り込まれたのが12年11月21日。その日に、まゆみ夫人から吉田会長に「離婚することになりました」というメールが来る。 文春が渡辺夫妻の離婚問題についてスクープしたのが、13年1月中旬。渡辺氏はこう話している。 「以前、夫婦喧嘩をした際に署名し妻に預けていたもの(離婚届=筆者注)を、選挙中に妻が勝手に提出したものです」 離婚届を提出したのに、また夫婦に戻っているのは不可解だが、夫人に頭の上がらない渡辺氏だから、土下座して復縁してもらったのかもしれない。 今回、党から返還された2億5,000万円と夫人の口座にあった同額をそろえて、吉田会長に返却しているのだが、よくあの夫人から取り戻せたものである。 だが借りたカネを返し、代表を辞任したからといって事は収まらないと、新潮は追及している。それは、夫人に振り込まれたカネのうち幾ばくかが使われた可能性があるからだ。 ベテラン税理士がこう話している。 「もし奥さんの口座に移された2億5000万円が、善美さんから奥さんに“与えられた”ものと認定されれば、贈与となる可能性が出てくる。この額なら税率は50%ですから、奥さんは莫大な額を納めなければなりません。もっとも、この場合、2人とも、借り入れた金の保管先を変えただけと主張するはず。しかし、もし、奥さんがその金の一部を使ってしまったようなことがあれば、その分は夫から贈与されたものと認定されます」 正確に調べるには、夫人の通帳を洗うことが不可欠だが、 「あの夫婦は完全な“主従関係”にある。家来が王様の許可なしに通帳提出を認めるなんて、初めから出来ない話なのです」 と、みんなの党の関係者が話している。 夫婦の知人が「夫が辞めた上に、税金の問題まで出てきたら……。想像するだに恐ろしい」と語っているが、渡辺氏を夫人から守る警備体制が必要のようだ。 政治家である前に、一人前の男になりきれないこんな人間を選んだ選挙民も、猛省すべきであろう。 日本の犯罪史上まれに見る惨劇「秋葉原連続通り魔事件」が起きたのは08年6月8日、日曜日だった。加藤智大は白昼の秋葉原の雑踏に2トントラックで突っ込み、さらにダガーナイフを使って7名もの命を奪ったのだ。 その加藤被告の弟に接触し、彼と心を通じ合った現代記者の齋藤剛氏が、弟の苦悩とその死について書いている現代の記事が泣かせる。これが今週の堂々第1位である。 加藤被告の実の弟・加藤優次(享年28・仮名)は著者にこう話したという。 「あれから6年近くの月日が経ち、自分はやっぱり犯人の弟なんだと思い知りました。加害者の家族というのは、幸せになっちゃいけないんです。それが現実。僕は生きることを諦めようと決めました。死ぬ理由に勝る、生きる理由がないんです。どう考えても浮かばない。何かありますか。あるなら教えてください」 この1週間後、優次は自ら命を断った。 加藤被告の起こした犯罪のために、被害者の遺族の人たちは塗炭の苦しみを味わっている。だが、加害者の家族も苦しみ、離散し、弟は兄の犯した罪に懊悩し、ついには自裁してしまったのだ。 弟は兄の事件によって職を失い、家も転々とするが、マスコミは彼のことを放って置いてはくれなかった。就いた職場にもマスコミが来るため、次々と職も変わらなければならなかった。 そんな暮らしの中にも、希望がなかったわけではなかったという。事件から1年余りが過ぎた頃、筆者が彼のアパートを訪ねようとしたとき、たまたま、女性と一緒に歩く姿を目撃したそうだ。 優次は彼女に、事件のことも話していたという。 「正体を打ち明けるのは勇気のいる作業でしたが、普段飲まない酒の力を借りて、自分のあれこれを話して聞かせました。一度喋り出したら、後は堰を切ったように言葉が流れてました。 彼女の反応は『あなたはあなただから関係ない』というものでした」 ようやく心を開いて話ができる異性との出会いは、彼に夢を与えてくれたのだろう。 しかし、優次の夢はかなうことはなかった。事情を知りつつ交際には反対しなかった女性の親が、結婚と聞いた途端に猛反対したというのだ。 2人の関係が危うくなり、彼女も悩んでイライラしていたのだろうか、彼女から決定的なひと言が口をついて出たという。 「一番こたえたのは『一家揃って異常なんだよ、あなたの家族は』と宣告されたことです。これは正直、きつかった。彼女のおかげで、一瞬でも事件の辛さを忘れることができました。閉ざされた自分の未来が明るく照らされたように思えました。しかしそれは一瞬であり、自分の孤独、孤立感を薄めるには至らなかった。結果論ですが、いまとなっては逆効果でした。持ち上げられてから落とされた感じです。もう他人と深く関わるのはやめようと、僕は半ば無意識のうちに決意してしまったのです。(中略)僕は、社会との接触も極力避ける方針を打ち立てました」 優次は、手記に繰り返しこう書いていたという。 「兄は自分をコピーだと言う。その原本は母親である。その法則に従うと、弟もまたコピーとなる」 そして「突きつめれば、人を殺すか自殺するか、どっちかしかないと思うことがある」。そんな言葉を筆者に漏らすようになっていった。 母親は事件後、精神的におかしくなり、離婚してしまった。父親も職場にいられなくなり、実家へ帰り、ひっそりと暮らしている。 優次は、加害家族も苦しんでいることを知ってほしいと、このように書いている。 「被害者家族は言うまでもないが、加害者家族もまた苦しんでいます。でも、被害者家族の味わう苦しみに比べれば、加害者家族のそれは、遙かに軽く、取るに足りないものでしょう。(中略) ただそのうえで、当事者として言っておきたいことが一つだけあります。そもそも、『苦しみ』とは比較できるものなのでしょうか。被害者家族と加害者家族の苦しさはまったく違う種類のものであり、どっちのほうが苦しい、と比べることはできないと、僕は思うのです。だからこそ、僕は発信します。加害者家族の心情ももっと発信するべきだと思うからです。それによって攻撃されるのは覚悟の上です。犯罪者の家族でありながら、自分が攻撃される筋合いはない、というような考えは、絶対に間違っている。(中略)こういう行動が、将来的に何か有意義な結果につながってくれたら、最低限、僕が生きている意味があったと思うことができる」 彼は兄と面会したいと願い、50通を優に超える手紙を書いたという。だが、一度として兄から返事が来たことはなかった。 罪を犯した自分より早く逝ってしまった弟のことを知らされたとき、加藤智大被告は何を思ったのだろう。一度でも会ってやればよかった、そう思っただろうか。 (文=元木昌彦)「週刊現代」4月26日号
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「オナニーの手伝いも……」中学生の息子と入浴する母親たち
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