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車両基地ファンの間ではおなじみ、手老善さん。(「鉄道ネイル」の久野知美さんの回(記事参照)でも、ちょっとだけ登場)
身の回りにいそうでいない、ちょっと変わったことをしている人や、面白そうな場所に、文筆家のやきそばかおるが直撃取材!
車両基地の貴重な映像を集めたDVD『車両基地』(ユニバーサルミュージック)が話題だ。車両基地というと縁遠いものがあるが、なかなか売れないといわれているDVD業界において7000枚を超える大ヒット。今月21日には、続編『車両基地2』も発売された。監修は “車両基地界の隠れた有名人”手老善(てろう・ぜん)さん(株式会社ジェイアール東日本企画)。実は、ほかにも意外なお仕事に関わってらっしゃるということで、お話を伺った。
■この車両基地がすごい!
やきそば 「やっぱり、いつも車両基地のことで頭がいっぱいですか?」
手老善さん(以下、手老) 「もちろん、仕事はきちんとしていますが(笑)、車両基地のことは気になりますね。大好きですから」
やきそば 「『車両基地』のDVDの第1弾では、主に山手線にスポットを当てていましたが、ほかにおすすめの車両基地は?」
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渋谷駅付近しか地上に顔を出さない銀座線の電車が踏切に!(東京地下鉄上野検車区)
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広大な地下空間。まるで秘密基地だ。(東京地下鉄上野検車区)
手老 「まずは、東京メトロ銀座線の車両基地です」
やきそば 「おお! なんだか、薄暗い空間に車体が光っていて未来を感じますね。銀座線の車両基地は、どこにあるんですか?」
手老 「上野です。銀座線の車両基地のことは、あまり知られていませんね。日本初の地下鉄の車両基地で、地上・地下と2層構造。地下鉄(特に、電気を線路の脇にある3本目のレールから取る第三軌条方式)としては珍しく、踏切があります。まさに唯一無二の存在感です」
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電気の消えた地下鉄なんて、よく考えてみれば普通見られない。(東京地下鉄上野検車区)
やきそば 「あらためて見ると、迫力がありますね! 回送電車ということになるから、一般のお客さんは電車に乗ったまま踏切を通過することはないというわけですね。銀座線といえば、時々、新型車両も走っていますが、まだ車両の数が少ないため、乗るとワクワクします」
手老 「実は、まだ新型車両の数は多くありませんが、写真に写っている01系はもう数年のうちに新型車両にどんどん切り替わっていくそうで……。だから、01系は今のうちに見ておかないと、見られなくなってしまうんです」
やきそば「ひょえ~~。それじゃあ、01系も今のうちに記憶に残しておきます」
手老 「あ、DVD『車両基地2』でも、じっくり見られますよ」
やきそば 「隙のない宣伝!(笑)」
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こんなに大きい赤い物体が集結する場所は、なかなかなさそう……。(京浜急行電鉄久里浜運転区)
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太陽光が反射するステンレスの車体がカッコイイ!(京浜急行電鉄久里浜運転区)
手老 「京急(京浜急行電鉄)の車両基地もおすすめです。京急は、鉄道ファンの方だけでなく、それほど鉄道に興味がないという方でも、好きな人は多いんです」
やきそば 「京急の車両基地の特徴はなんでしょう?」
手老 「京急最大の車両基地である久里浜の車両基地には、運転区と検車区、工場が並んでいまして、複数種類の真っ赤な車両たちが鎮座している光景は圧巻です。また、神奈川新町にある車両基地には、基地の中間を横断する踏切があり、その前後が留置線という珍しい光景が望めます。DVDにも収録していますが、ピットでの点検や作業風景も見どころのひとつですね」
やきそば 「お~~。一瞬、置いてきぼり感を食らってしまいましたが……」
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信号機やポイントを切り替える信号扱所。静かながらも緊張感のある室内に、確認の声とスイッチの操作音が響き渡る。(京浜急行電鉄久里浜運転区)
手老 「あと、作業に関して言いますと、京急はほかの鉄道会社と比べて、手を使って作業をすることが多いですね。鉄道の運行の管理に当たっては、コンピューターで制御されていることが多いのですが、京急の場合は例えば信号を変える時も、手でパチッパチッとスイッチを変えたりして、『人間が支えているんだな~』という感じが特にします」
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西武鉄道小手指車両基地には、線路の保守車両もある。主に動くのは終電後だ。
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ピットでは定期的に車両の点検が行われる。(西武鉄道小手指車両基地)
手老 「あとは、小手指にある西武鉄道の車両基地もおすすめです。西武池袋線小手指駅から延びた約800mの非常に大きな車両基地です。西武鉄道最大のこの基地は、一般車両はもとより、特急車両、直通する東京メトロや東急などの車両も留置されているため、バリエーションが豊かです。西武線の昔ながらの黄色い車両があったり、メトロのアルミ製の車両があったりと」
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レアな並びも車両基地ならでは。(西武鉄道小手指車両基地)
やきそば 「これは西武鉄道ならではの光景ですね」
手老 「通常の黄色い3000系車両のほかに、『ライオンズ』と『銀河鉄道999』のラッピング車が並んでいる光景は、非常に貴重ですよ!」
※勘のいい方はお分かりでしょうが、こちらもDVD『車両基地2』でお楽しみいただけます。
■手老さんは、こんな仕事もしていた!
ちなみに、手老さんのメインの業務は、車両基地のDVDを作ることではない。
やきそば 「手老さんは、鉄道の番組にも関わってらっしゃいますよね」
手老 「はい。例えば『中川家礼二の鉄学の時間』という番組には、相談役で携わっていました」
手老さんは、鉄道ファンの芸能人との交流も広く、鉄道についてもっと知りたいという方から、“相談”を受けることもあるそうだ。
手老 「あと、車両のドアの上にモニターがありまして、『トレインチャンネル』っていうのですけれど、それにまつわる仕事もしておりました。社会人になって間もない頃、2005年~06年にデジタルサイネージ(電子看板)が普及し始めたんですけど、そのシステム開発や運用をしていました。放映する天気予報やニュースのデザインを考えるにあたり、文字の大きさや文字数はどのくらいであれば読みやすいかといったことも考えていましたね」
やきそば 「ひょえ~~」
そう、手老さんの本職はSEだったのである。普段見ていたあのニュース画面を手がけていたなんて!
手老 「ほかにも、バスの車両基地DVDなんていうのも……」
やきそば 「なに!? バス業界にまで進出?」
バスマニア狂喜乱舞!
バスの車両基地DVDは9月18日発売予定とのことなので、もうしばらくの辛抱……。それにしても、車両基地DVDをヒットさせて、続編を発売したかと思いきや、今度はバスの車両基地DVDも手がけるという、手老さんの今後の活躍に期待したい!
●やきそば・かおる
山口県出身、東京都在住。ライター、構成作家、写真家。趣味は、変わった人に会って、変わった話を聞くこと。「相づちだけはうまいと言われます」(本人談)
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@yakisoba_kaoru