今週の注目記事 第1位 「自民党は死んだ」(「週刊文春」7/9号) 「安倍総理の周りにはなぜ『おバカ』が集まるのか」(「週刊現代」7/18号) 「小林よしのり『わしを呼ぶなと圧力をかけた自民党の劣化はもう止まらない』」(「週刊ポスト」7/17・24号) 「うぬぼれ『自民党』の構造欠陥」(「週刊新潮」7/9号) 「私を『言論弾圧』男に仕立て上げた大マスコミに告ぐ 百田尚樹」(「週刊新潮」7/9号) 第2位 「『エロ本所持』容疑であなたを逮捕する」(「週刊現代」7/18号) 第3位 「これから始まるギリシャ・ショックのすべて」(「週刊現代」7/18号) 第4位 「『秋篠宮家の料理番』の告白」(「週刊文春」7/9号) 第5位 「日テレ水卜麻美と関ジャニ横山裕」(「週刊文春」7/9号) 第6位 「新幹線焼身自殺損害賠償5億円 71歳男性の“責任能力”」(「週刊文春」7/9号) 「新幹線を自分の焼き場に選んだ『71歳老人』自殺テロの教訓」(「週刊新潮」7/9号) 「『年金に不満だった』暴走老人、心に火がつくまで」(「週刊現代」7/18号) 第7位 「白百合女子大卒『資産家令嬢』が異臭遺体を埋めた三角関係」(「週刊新潮」7/9号) 第8位 「『36年前の不倫を許せますか?』“介護夫”暴行死事件」(「週刊文春」7/9号) 第9位 「13歳少女ら慟哭『イスラム国兵士に集団レイプされた』」(「週刊ポスト」7/17・24号) 第10位 「『一日タマゴ3個』で痩せた、勃った、毛が生えた!」(「週刊現代」7/18号) 番外 今週の現代とポストのSEX記事の勝者はどっちだ! 今週のポストは、なぜか合併号。それも430円。現代とポスト2冊で850円だから新書1冊分である。週刊誌のほうがバラエティはあるが、どの記事も突っ込みが浅く、読みごたえがない。新書も毎月洪水のように発売されるし、30分もあれば読めてしまうものも多いからどっちもどっちだが、今週のポストは合併号にしては内容がイマイチである。 その分、前グラビアで「Gカップの女子アナさん 東北で1番人気」だという元秋田朝日放送の塩地美澄のセクシーと、後半で「工藤夕貴 大人の眼差し」、それにいつもの「美咲の森」と、いつもよりは盛りだくさんだが、セクシー度はそれほどでもない。 秋田朝日放送の塩地アナは辞めたようだから、もしかするとこれからAVデビューするのかな? そう思わせる豊満ボディではある。 現代は巨人のマイコラス(こんなのいた?)選手の美人妻のセクシーとポストを真似てつくった「美少女 百合沙がいる街」、袋とじは「畑中葉子 超レア・ヌード」まあ、グラビアでは引き分けというところか。 記事では現代が「『オキトシンSEX』で最高の快楽をあなたに」。オキトシンは脳内ホルモンで、愛情ホルモンともいわれ、母親が赤ちゃんに母乳をあげるときに分泌されるという。 これは大人の男が女性の乳首を優しく吸うことで、同じようなことが女性に起こるというのだ。いきなりズンズンいくのではなく、やさしく時間をかけて乳首をなめることで女性が高まるというのだ。お試しあれ。 ポストは「死ぬまでSEX」の極意を、その道の達人に開帳してもらう大特集。 まずは、カイヨワ研究(フランスの社会学者だそうだ)で知られるフランス文学者で富山大学名誉教授の塚崎幹夫氏(85)。結婚して27年になる妻(53)と2人暮らしだが、今もなお、週1回の性生活をエンジョイしている現役だという。その秘訣は読んでのお楽しみ。 お次は「美味しいご飯といいセックスはシニア男性と」という女性が多いと、官能作家の深志美由紀氏が断言している。 「そういう女性は、シニア男性と結婚しようとは思っていません。ですから、既婚者がモテます。彼女たちは彼氏が別にいても、これまで知らなかった世界を見せてくれるシニア男性とも同時に付き合うことで、美味しいところ、楽しいことだけをつまみ食いしているんです」(深志氏) シニアとは、いくつからいくつぐらいまでをいうんだろう? しかし、「いざ鎌倉」というときに役に立たなくてはいけない。それには、スクワットがいいというのだ。スクワットをするときは、太腿が水平になるくらいまでお尻を落とせば十分だそうだ。「1セット10回を3セット、5分程度が目安です」(長瀞医新クリニック院長の横山博美氏)。よし、今日から始めるか。 ポストは、ご丁寧に袋とじで「SEX GOODS」を80アイテムも紹介している。まさに至れり尽くせり。今週は、セクシーグラビアを含めてポストの勝ち。 だが、記事では現代の圧勝。ここには載せなかったが、現代の「地震保険」「血液検査でがんがわかる」の2本は、保存用に切り取っておいた。それ以外でも、今週は現代と文春の充実ぶりが目立つ。 ところで、2004年7月に創刊したリクルートホールディングスのフリーマガジン「R25」が9月24日号で休刊するという。ウェブ版は今後も継続するというが、一時代が終わったということだろう。 初代の編集長と話したことがあるが、フリーマガジンの難しいところは、モチベーションを持ち続けられるかどうかである。「カネを取らない雑誌はそこがなかなか難しいが、頑張れ」と言ったことがある。よく続いたほうかもしれない。 さて、まずは第10位から。最近タマゴがまた見直されている。もともとタマゴはビタミンCと植物繊維以外のほとんどの栄養素を含んでいる「完全栄養食品」と評されるほど万能だが、これまではコレステロールが高いという理由だけで「タマゴは一日1個まで」という常識が広まり、たくさん食べたくても食べられないという人も多かった。 だが最近の研究でタマゴを食べても血中のコレステロール値は大きく変わらないとわかり、これまでの常識が覆ったのだ。 第一、タマゴはダイエットにいい。さらに、タマゴにはビタミンB群の一種である「ビオチン」と鉄分が多く含まれている。「ビオチン」は毛細血管を太くすることで髪の毛の新陳代謝を促進し、鉄分は毛根細胞に酸素を供給するために非常に重要な役割を果たすから、髪の毛にいいそうだ。 もっとすごいのは、タマゴに含まれる「アルギニン」という成分。アミノ酸の一種で、強壮効果が高く、男性ホルモンの源なんだそうだ。 でも一日3個は、なかなか食べるのは大変だね。 さて、日本人の一番いけないところは、忘れやすいことである。イスラム国にジャーナリストの後藤健二さんたちが「処刑」されてからまだ5カ月だというのに、メディアからイスラム国の情報を見ることはまれである。 ポストは、報道カメラマンの横田徹氏が見てきたイスラム国の惨状を報じている。 昨年8月3日深夜、イスラム国がイラク北部のシンジャールへ侵攻したため、クルド人の宗教少数派であるヤジディ教徒たちは町から逃げ出したそうだ。ヤジディ派はイスラム国から悪魔崇拝として迫害される存在で、当時、町の北側にあるシンジャール山に約5万人のヤジディ教徒が逃れたといわれる。 ラマ(仮名)もその1人だった。だが彼女は、イスラム国に拉致されてしまった。彼女がこう話す。 「連れていかれたのはモスル(イスラム国支配下にあるイラク北部の都市)の収容所でした。もともとキリスト教の教会だったんだと思います。壁に十字架が描かれ、聖書が置いてありました。窓は毛布で塞がれていて、外の光は入ってきません。建物の中に700人くらいの女の子がいたと思います。私たちは戦闘員のレイプから逃れるために、『どうやって自殺しようか』と話し合っていました」 だが、ラマは、 「同じ収容所にいた女の子と一緒に奴隷として売られて、兵士と強制的に結婚させられました。男は私たちを自宅に連れて帰ると、その日の晩、寝室で私たちをレイプしました」 悲惨な体験を経てラマは現在、クルド自治区に戻り保護されているという。 イラク北部某所で、ヤジディ教徒の救出活動を展開するハリド・ハジと接触できたそうだ。シンジャール出身の元弁護士で、これまでに約100人を救出してきたという。 「奴隷にされた子から電話やSNSでの連絡を受け、場所を特定し、現地に住む密輸を生業にする協力者に金を払って救出している」(ハジ氏) 1人の救出に要する費用は、拘束されている地域によって異なるが、約5,000ドルだそうだ。クルド自治区政府などの援助もあるが、多くは被害者家族が捻出するという。 悲劇の連鎖は、どうしたら止めることができるのだろうか。少なくとも空爆のような力では止められない。世界の叡智を集めて早急に考えなくてはいけないのだが、日本政府にはそのような考えは少しもないようだ。 さて、身につまされる話が文春に載っている。昨年7月に目黒区の主婦(当時70歳)が、介護していた79歳の夫の頭をベッド上で何度も殴りつけ、その9日後に夫は急性硬膜下血腫で死亡した。 その動機が、36年前の不倫が許せなかったからだというのである。事件の1年前に夫婦で思い出話をしているうちに、この浮気の話も出て、夫は時効だと思って、好きになった過程や旅行に行った話、ペンダントをプレゼントした話を語り、その後、胃ガンの手術などをして要介護状態となった。 そして事件が起こる。教訓! いくつになっても、浮気した話は自分の心の中にだけ秘めておくこと。ゆめゆめ女房になど話してはいけない。女は執念深い。幽霊は女と相場が決まっているのを見てもわかるはずだ。 新潮は白百合女子大卒の資産家令嬢が付き合っていた男と一緒に死体を遺棄した事件を報じている。 新潮によると、 「大学4年の2013年7月19日ごろ、交際していた佐藤一麿と一緒に、当時25歳だった阿部由香利さんの遺体を、神奈川県の相模湖近くの墓地へ運び、穴を掘って埋めた。秋山(智咲=筆者注)が住んでいた世田谷区のマンションの防犯カメラには、遺体を包んだと思われるブルーシートを2人が運ぶ様子が映っていました。実際、遺体を運ぶレンタカーを運転したのも彼女だし、彼女が供述した場所から遺体が見つかったのです」(捜査関係者) 彼女は、犬の死体だったと思ったと供述しているそうだし、遺体を運んだ後もテレビに出たりと、自分が罪を犯したという意識がなかったのではないかと新潮は書いている。 秋山の実家は静岡県富士市の豪邸だそうだが、佐藤のほうも渋谷区上原の時価3億円の家に両親と住んでいたそうだ。 佐藤はブランドの服を着て、慶應義塾大学に通っていてフジテレビに入社が決まっているというのが常套句だったようだが、すべてウソだった。 母親は文化放送のアナウンサーをしていたようだ。佐藤は高校を卒業後、ウソの起業話などをでっち上げ、同級生たちからカネを巻き上げていたそうだ。 そんな佐藤が秋山と知り合い、一時は結婚というところまでいったそうだが、破綻している。 殺された阿部さんは高校卒業後に結婚して子どもまでもうけたが、離婚。離婚成立後に佐藤と会い、交際していた。気になるのは生まれた子ども、07年に10カ月検診を受けた後、行方が知れないそうだ。 彼女は風俗店で働いていたが、佐藤と金銭のトラブルがあったようで、それが犯行に結びついたのではないか。ペテン師のような男と交わってしまったことで、2人の女の運命は暗転した。 ところで、新幹線でついに大事故か? ニュース速報を見たとき、そう思った人は多いだろう。神奈川県小田原市付近を走行中だった東海道新幹線車内で男がガソリンをかぶって焼身自殺を図り、本人と巻き添えになった乗客合わせて2人が亡くなり、26人が重軽傷を負った。 焼身自殺したのは、東京都杉並区の林崎春生容疑者(71)。十数年前から2K、家賃4万円、風呂なしのアパートに暮らし、流しの運転手や鉄工所、清掃関係の仕事に就いていたが、1年前に辞めて年金で暮らしていた。だが、家賃を払うと4万円しか残らず暮らしていけないと、「年金事務所で首をつる」と話すこともあったという。 現代は「自爆テロ」という言い方をしているが、テロではなく、生活苦から自棄になっての自殺のようだ。だが先頭車両、しかも窓は開かず排煙設備のない新幹線だから、大惨事にならなくて幸いだった。 新潮と文春は機動力を生かして特集を組んでいるが、情報が少ないため目新しいものはない。文春で鉄道アナリストが、男の遺族への賠償請求は莫大なものになると話している。運休になった新幹線が33本。払い戻しを1人約1万円として3億3,000万円。車両の修繕費は16両編成で約40億円といわれる。さらに、巻き添えで亡くなった女性や負傷者への損害賠償を含めれば5億円はくだらないというが、取れる当てはない。 新幹線は10分間隔で運行されているから、乗客各自の手荷物検査を行うことは難しい。新潮の言うように「新幹線の安全神話は、テロ組織でも過激派でもない、71歳の老人に容易く打ち砕かれてしまった」。これまで大事故直前までは何度かいったことがある新幹線だが、運良く難を逃れている。その運が尽きたときは……考えると怖ろしい。 日本テレビの水卜麻美(28)といえば、週刊文春の「好きな女子アナ」で昨年は春秋連覇した人気女子アナである。こう書いて、彼女が出ている『ヒルナンデス!』を一度も見ていないことに気がついた。私は外で彼女に会ってもわからない。水卜(ミト)ちゃん、ごめん! 読み方はミトでいいのかな? ともかく、人気のある彼女が『ヒルナンデス!』で共演している関ジャニ∞の横山裕(34)と付き合っていると文春が報じている。 横山はメンバー1の演技派だという。2人が会っているのは、なんと都内のボクシングジムだそうだ。そこで仲良くストレッチしたり、水卜は本格的にバンデージを巻いてトレーニングに励んでいるところを、文春が激写。 お決まりのデートのやり方は、ジムの後いったん別れて、彼女がタクシーで高級百貨店(どこだろう? 渋谷の東急百貨店本店かな)へ立ち寄って食材を選んだ後、港区にある横山の自宅マンションへ。遅れて、横山ご帰還。 もっともジャニーズ事務所側は「横山の自宅で仕事上親しくさせて頂いている皆様との食事会をした際、その中のお一人に水卜アナウンサーがいらっしゃったことはありますが」と、これもお決まりのコメント。 文春がグラビアで掲載している直撃の際の、水卜のビックリした表情がいい。名刺を見つめて「なななんだ~ッ」 横山さんの舞台を見に行かれていますよね、という質問には、 「えっ? ほんっとにすごい見てる。皆さん、色々なんか色んなあれなんですね。ほんっとに申し訳ない」 交際されているかどうかだけでも、という質問には、 「これ多分、お答えしないほうがいいような、どっちにしろ」 人気者はつらいね。いい大人同士が付き合っていることぐらい自分でいえばいいのに、そう思うのは私のような無名の一私人だからだろうね。 このところ、秋篠宮紀子さんへの風当たりが強いようだ。娘・佳子さんとの口げんか、職員への厳しい叱責などだが、文春は秋篠宮家で料理番をしていた人間に焦点を当て、批判的な作りをしている。 秋篠宮家の職員の定員は18名と小さな所帯である。しかも、秋篠宮家に支払われる皇族費は年間6,710万円で、この中から食事、掃除洗濯、職員の人件費、洋服代や教育費まで捻出しなくてはいけない。 そうしたこともあるのか、職員へのお小言が飛ぶことが多いというが、とりわけ料理番は過酷だといわれているそうだ。定年まで勤め上げた料理番がいまだかつていないというのがその証左だと、文春は書いている。 紀子さんが女子職員に「あなた、自己中ね!」と強い口調でお説教したことが話題になったことがあるそうだが、 「紀子さまは、職員の至らない部分を、強烈な比喩を使ってお叱りになることもある。恐ろしくてとても言えませんよ。ある料理人はショックが大きすぎて、抑鬱状態になり、『宮家を下がりたい』と言い出し、まったく料理とは無関係の部署へ異動しました」(秋篠宮家関係者) 近年、秋篠宮家の料理番を長く務めた男性技官A氏のケースがある。沖縄の調理師学校から送られてきたA氏は、家族と一緒に上京してきた。宮家で働くことに情熱を燃やしていたそうだが、いつの間にか出勤してこなくなったという。 「定年までしばらく間がありましたが、最終的に自己都合で退職したのです」(宮内庁関係者) 文春はそのA氏を訪ねていったが「もう昔の話なので、何も話すことはありません。思い出すこともありません」と話す顔は蒼白だったという。 ずいぶん思わせぶりな書き方である。皇太子妃雅子さんの情報があまり流れてこないこともあるのだろう、また悠仁さんを抱える「事実上の内廷皇族」だから、注目が集まるのは仕方ないのかもしれないが、皇族のプライバシーはどこまで許されるのか、考え込んでしまった。 さて、ギリシャの国民投票で財政緊縮策の受け入れ反対が多数となった。そのため、7月6日の東京株式市場は一時、500円超も値を下げてしまった。ギリシャの危機は遠い国のことではなく、グローバル経済の深刻さを見せつけることになった。 現代は巻頭からこのギリシャ問題を大特集している。 現代によれば、トマ・ピケティ教授は他の経済学者らとともに、6月初旬のフィナンシャル・タイムズ紙に寄稿して、「交渉が失敗に終わればチプラス政権以上に過激で、敵対的な政権が誕生するかもしれない」と警告し、EU側はギリシャに緊縮策ばかりを求めず、もっと寛容になるべきだと訴えていたそうだ。 ギリシャサイドにしてみれば、チプラス政権は「反緊縮」を掲げて当選したので、安易にEU側に譲歩することはできないという事情があった。 だが、単にそれだけではないと現代は言う。 「ギリシャは仮にカネを返済しなくても、ユーロ圏に居座ることができるのです。そもそも欧州の団結を謳って結成されたEUには、ユーロ圏からの加盟国を強制的に退出させる規定というものが存在していないからです。すでにギリシャは借金を返すためさらに借金をするようなサイクルになっている。そこで支援を打ち切られれば、新たな資金を調達することができなくなります。だが逆に言えば、IMFへの返済も、ギリシャ国債の元本や金利も払わなくてよくなる。そうした事情を考えれば、無理をしてまで厳しい緊縮策を受け入れなくてもいいわけです」(FXプライム・チーフストラテジストの高野やすのり氏) また、クレディ・スイス証券チーフエコノミストの白川浩道氏によればこうだ。 「仮にギリシャがEUから離脱しようとすれば、ギリシャ政府はEU離脱に関する国民投票を新たに行わなければいけません。しかし、もしそこで賛成となっても、ギリシャがEUから離脱するまでには、EUとの債務減免交渉、その債務減免についての債権国での議会承認などといった手続きが必要。本当に離脱するには少なくとも1年、場合によっては2年程度かかると思われます」 ギリシャの波紋は、アメリカも例外ではない。ノーベル経済学賞を受賞した米イエール大学教授のロバート・シラー氏はこう警鐘を鳴らす。 「現在の米国株は歴史的にも異常なほどに高値警戒感が出ている。シラー教授は、『この株式市場バブルはバースト(破裂)する可能性がある』と懸念していました」(飯塚真紀子氏) ギリシャ以外でも、破綻がささやかれている国にスペインがある。 「今年選挙を予定しているスペインで反緊縮を訴える政党が躍進してしまうのではないかということです。(中略)ギリシャに比べてスペインの経済規模ははるかに大きいので、世界の株式市場に与えるインパクトはギリシャの比ではありません」(第一生命経済研究所主席エコノミストの田中理氏) ギリシャ・ショックのその日に、あっという間に600円超も暴落し、株価の脆さを露呈した日本だが、まだ不安はあるという。 「あまり指摘されませんが、6月29日の暴落劇の背景には、日本経済の先行き不安がありました。(中略)日本経済があまり回復していない、もしかしたら後退しているかもしれないとの不安が出たところに、ギリシャ問題が重なり、株価下落に拍車がかかった」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部長の鈴木明彦氏) 日本にも起こるかもしれないギリシャの現状を、アテネ在住ジャーナリストの有馬めぐむ氏がレポートしている。 「財政危機が発覚し、金融支援と引き換えに緊縮政策が開始されて以降、貧困率が特に上昇しているのは18~24歳の若年層。高学歴でも仕事は得られず、仕事にありつけても700ユーロ以上は稼ぐことが難しいため、彼らは『700ジェネレーション』と呼ばれている。『小さい子供を持つ家庭の貧困もすさまじいものです。ある財団が貧困層の多い公立小学校の調査をしたところ、17%の家庭が誰一人収入のある人がいない、25%の家庭が毎日の食事に困っている、60%が明日以降の生活に不安があるという切迫した状況であることがわかりました。公立の小学校では空腹の子供が急増し、体調不良や集中力低下の児童が多く報告されています。しかも、以前は多くの公立の保育所には給食センターがあったのですが、資金難でこれを閉鎖して安価なランチボックスのサービスを利用するようになった。それも最近は国からの運営費が来ないため、十分オーダーできない保育所が出てきているので、状況は悪くなるばかりです』」 明日は我が身。否、もうすでに始まっているのではないか。新幹線で焼身自殺した男性の死がその号砲なのかもしれない。 戦争できる国にすることばかりに熱心な安倍首相だが、その裏で国民の自由を縛る法律はいくつも作ってきた。現代が報じているこれも、そのひとつである。 「7月15日、改正児童ポルノ禁止法の猶予期間が過ぎ、児童ポルノの単純所持が処罰の対象になる。簡単に言えば、この日から、18歳未満の『児童』の裸などを写したエロ本や写真集、DVDなどを『ただ持っているだけ』で逮捕されてしまうのだ。被写体が女の子だろうと男の子だろうと関係ない」(現代) それは、このケースでも適用されるかもしれないという。91年に発売され累計155万部を売り上げた宮沢りえのヌード写真集『Santa Fe』(朝日出版社)だ。撮影当時、彼女はまだ17歳だったという説が根強い。宮沢りえや撮影した写真家の篠山紀信氏は、正確な撮影時期を明かしていないが、児童ポルノ禁止法改正案の国会審議でも、同書は激しい議論を呼んだそうだ。 複数の議員が「(出版社や書店が)廃棄するのは当然」「有名な女優だろうが関係ない」「篠山さんにもネガごと捨ててもらう」と断じていたという。現代によれば、 「さらに恐るべきは、今や『ポルノ界の主流』ともいうべき、インターネット・ポルノに対する規制である。警察は、ネット上で出回っている無数の児童ポルノこそを『本丸』と見ている」(同) 海外のエロ動画サイトで、『本物! 女子高生援交(援助交際)動画』と題された生々しい映像を見てしまったとする。家族にバレないように見終わった後で履歴はちゃんと消し、変な広告もクリックしなかった。 そう思って安心し切っているとしたら、あなたのリテラシーは危険水準だと現代はいう。 「インターネット上の全ての行動、つまり『誰がどのサイトに接続し、何を見たか』はすべてNTTなどのネット接続会社に記録されています。たとえ手元のパソコンで履歴を消したとしても、接続会社の履歴は消えません。もちろん、全契約者のデーターは膨大すぎるので、誰かがいつもチェックしているというわけではありません。しかし、仮に捜査当局が『この児童ポルノ動画に接続したことのある回線のデーターを見せてほしい』と要請した場合、おそらくネット接続会社は応じるでしょう」(中央大学総合政策学部准教授の岡嶋裕史氏) こんな例があるのだ。日本ではほとんど報じられなかったが、98年から2000年代前半にかけて、海外で史上最大の「児童ポルノ一斉摘発キャンペーン」が展開された。このキャンペーンで特筆すべき点はイギリスだという。約4,300件の家宅捜索を行い、有罪となったのは1,400人余り。一方で大量の冤罪を生み、少なくとも30人以上の自殺者を出したそうだ。あまりに荒っぽいその捜査は、今なお大きな議論を読んでいるという。 現代は「とばっちりや冤罪から身を守るためにも、手元にある『疑わしきもの』は、この際処分する他ないのだろう」と結ぶ。 しかし、冗談ではない。私にロリコン趣味はないが、仕事柄そうした写真集を買ったこともある。そんなものはどこか家の隅に埋もれているのであろうが、ガサ入れされれば出てくるかもしれない。ネットのエロ動画も然りである。 他人に見せたり売ったりしないで個人で楽しむ趣味の領域にまで国家が介入するのは行き過ぎだと、私は思う。暗く恐ろしい世の中になってきたものだ。 さて今週の第1位は、安倍首相が率いる自民党が大混乱に陥っていることを報じている各誌の記事。 事の発端は、安倍首相に近い自民党の若手議員40人が6月25日に憲法改正を推進する勉強会を開いたことである。そこへ招かれた作家の百田尚樹氏が「沖縄の2つの新聞(沖縄タイムスと琉球新報のこと=筆者注)は潰さないといけない。沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と発言し、大西英男議員から「マスコミを懲らしめるためには広告料金がなくなるのが一番」などという「暴言」が飛び出したのだ。 大西議員は昨年4月にも、国会で女性議員に対して「自分が子どもを産まなきゃ駄目だ」とヤジを飛ばしている。 この問題に、当初は危機感のなかった谷垣禎一幹事長や安倍首相だったが、世論や党内からの反発に慌てて3人の議員を「厳重注意処分」にしたが、騒ぎは収まりそうにない。 その上、安保法制をテーマに討論する予定だった田原総一朗氏の『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)への出演をOKしていた自民党議員が次々に断り、田原氏によると、その数30数人に上ったという。 言論弾圧の次は暴言を吐かないように議員たちを封じ込める安倍首相のやり方に、文春もさすがに怒ったのか「自民党は死んだ」と特筆大書しているが、タイトルほどの内容はない。 驚くのは新潮である。タイトルは「うぬぼれ『自民党』の構造欠陥」だが、中に「白でもクロと書いてきた『琉球新報』『沖縄タイムス』」という章がある。まるで、百田氏の援護射撃のような記事である。 「ライバル同士に見えるが、『反基地』『反安保』のためなら犯罪者を正義の人に仕立てることも平気だ。そして、沖縄では両紙の報じたことが『事実』になる」 両紙が百田氏へ抗議声明を発表したことも「一作家の冗談話を大上段で批判する様は異様と言うしかない」と批判している。 さらに「両紙にかかると違法行為も『正義の鉄槌』になってしまう」と書いているのは、反基地運動の幹部らが「キャンプ・シュワブ」の境界線で反対派と警備員らの揉み合いを制止しようとしたら、基地内に引きずり込まれ「不当逮捕された」と報じた琉球新報の記事についてである。 新潮は「反基地運動を批判する」人間を登場させ、活動家は明らかに基地に不法侵入しており、両紙の記者も一緒に入り込んでいたと“証言”させている。 しかも「沖縄に言論の自由はない。『琉球新報』『沖縄タイムス』の自由があるだけである」と結ぶ。これを沖縄の歴史や民衆の痛みを理解しない「暴論」だと考えるのは、私だけではないはずだ。 その上、件の百田氏にこう言わせるのである。「私を『言論弾圧』男に仕立て上げた大マスコミに告ぐ」。その中で言論人として言い訳にならない言い訳をしている。 「『懇話会』はまったく私的な集まりで、公的なものではない」 「その時のセリフを正確に書く。『沖縄の2つの新聞社は本当は潰さなあかんのですけれども』」 「私は議員でもなんでもない民間人である。私人が私的な集まりで、しかもクローズドな場において、雑談のような質疑応答の中で口にした一言を『言論弾圧を目論む言葉』として弾劾するのはどうなんだろう。それともそれがマスコミの正義なのか」 この男の品性のなさ、自覚のなさに、書き写す手が震えてくる。いくら陣笠とはいえ自民党議員の集まりに呼ばれて、クローズドな私的な集まりといういい方はないはずだ。 オフレコの会見でも、問題発言があれば国民に知らせるのはメディアの使命である。それに百田氏は安倍首相のお友達で流行作家、一私人ではない。 彼はこうも言っている。「作家『百田尚樹』も多くの読者が『つまらん、もう読むのやめよう』と思ったときに、自然と消えてなくなる」。 私は以前からこの男の書いたものなど読む気はないが、今回の発言をきっかけに、私のような人間が多くなるのは間違いないと思う。 保守の論客・小林よしのり氏も自民党のやり方にこう怒っている。 「これが現在の自民党の一般的レベルだ。もはやネトウヨと同等まで劣化した。彼らは『正論』や『WILL』、『産経新聞』といった紋切り型で勇ましいことばかり書いてウケようとするメディアばかりに目を通しているのだろう。そこに登場する言論人は中韓やリベラル派に対する暴言をためらいもなく吐いている。それを読んでいれば気持ちいいのかもしれないが、一方で本はまったくといっていいほど読まないから違った見解を知らず、幅広い知識がない」 党内はガタガタ、支持率は急降下する安倍首相だが、会期を大幅に延長して「戦争法案」を強行採決する腹を固めた。 衆議院で強行採決して参議院に送れば「60日ルール」がある。参議院で60日以内に採決されなくても、衆議院で3分の2の賛成があれば法案は成立するというものである。 だが新潮によれば、この間に総裁選があり「仮に(支持率が=筆者注)30%を切るような事態になれば、対抗馬が出る可能性もある」(全国紙政治部デスク)から、総裁選の期間中はこれまでの慣例からいけば国会はストップする。 さらに、9月28日からの国連総会に出席するために安倍首相は、25日には日本を出発しなければならない。 大幅延長しても、何か想定外のことが起きれば、強行採決、60日ルールを使ってもギリギリ間に合わない事態もありうる。だが、この明確に憲法違反の法案を成立させ、日本国憲法を「襤褸の旗」にしてしまおうという安倍の策略をどこかで止めなくてはいけない。 幸い、支持率が下落して不支持率が上回ったと、今朝(7月6日)の毎日新聞が伝えている。憲法を蔑ろにするということは「国民主権」を蔑ろにすることである。今こそ国民の意思がどこにあるか、大声を上げて安倍自民党に聞かせてやろうではないか。 (文=元木昌彦)「週刊現代」7/18号(講談社)
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宮沢りえ『Santa Fe』もアウト!? 「エロ本」所持で逮捕される日がやって来る!
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