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飽和状態の“ハーフ枠”でユージがひとつ抜き出る理由『解決!ナイナイアンサー』(5月12日放送)を徹底検証!

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レプロエンタテインメント公式サイトより
 5月12日に放送された日本テレビ系『解決!ナイナイアンサー』にて、ハーフ芸能人を集めた座談会が行われた。人気企画の第2弾で、今回の座談会出演者は植野行雄(デニス)、JOY、春香クリスティーン、リロイ太郎、ざわちんという5人のメンバー。ハーフタレントならではのあるあるやエピソード、あるいは過去の秘話を披露し、座談会自体は盛り上がった。  だが、この番組の中で最も印象的だったのは、デニス植野が冒頭に発した「ハーフタレントは飽和状態」という発言であった。これは確かに事実である。現在の日本の芸能界において、ハーフタレントの人数はかなり多い。そしてまた、大抵の場合、テレビが求める「ハーフタレント」とはそれ以上でも以下でもないため、スタジオゲストのアントニー(マテンロウ)が語ったように、自分が行けなかった仕事がデニス植野に回っているなどの現象はしばしば起こっている。そもそも番組で「ハーフ芸能人座談会」が企画されているという時点で、ハーフタレント界はいま一つの転換期を迎えていると言ってもよいだろう。  そこで必要になってくるのは、ハーフタレントという枠からの脱却である。ハーフタレントとしてではなく、その人自身として番組から呼ばれるようにならなくては、芸能界で生き残ることはできない。たとえばベッキーやローラ、ウエンツ瑛士もいわゆる「ハーフタレント」を出自としているが(ローラは正しくはクォーターだが)、いまやハーフタレントとして呼ばれることはない。あくまでもベッキーとして、ローラとして、ウエンツ瑛士として呼ばれるわけであり、つまり「ハーフタレント枠」から飛び出し自分自身の枠を作れるかどうかが、彼らの行く末を決めることになる。  さて、このようにハーフタレントが乱立する中で、いま現在進行形でその枠から脱却しようとしているタレントがいる。それがユージだ。かつてはJOYとのコンビで人気を博したユージだが、2014年2月に一般女性と結婚し、父親になったころを契機として、徐々に仕事の幅をスライドさせている。明らかに多くの番組で、ハーフタレントとしてではなく、あくまでもユージとして求められている仕事が増えている。  それでは、いかにしてユージは「ハーフタレント」枠から脱却を果たすことに成功しつつあるのだろうか? そのヒントは、ユージ自身が書いた青春自伝的小説『マミーが僕をころしにやってくる』(※以下『マミー』)の中にあった。若くして両親が離婚し、日本で母親に育てられたユージが小学校にいじめられた反動で手の付けられない不良となり母とも絶縁、だが生まれ変わることを決意し母親と和解する、というストーリーだ。この『マミー』で描かれるユージ本人のエピソードとともに、ユージがいま現在行っているハーフタレントからの脱却方法を検証したい。 (1)自分だけの居場所を作る  『マミー』の中でユージは小学校時代、ハーフであるということを理由にいじめを受ける。そのため、いわゆる中学デビューを果たすべく、中学校の入学式の日にヤンキーとなり、その後は不良の道へと進むことになる。この行動が倫理的にどうかというのはあるにせよ、ここでユージは自分だけの居場所を自らの手で作った。流された場所にいるのではなく、自分だけの居場所を作ることを決めたのだ。  これはハーフタレントに置き換えれば、ハーフタレント枠ではない仕事をしっかり取ってくる、ということにほかならない。たとえばユージで言うならば、日本テレビ『所さんの目がテン!』やNHK Eテレ『すイエんサー』『趣味の園芸』への出演である。これだけ見てもかなり意識した上で、いわゆる知的な番組への出演を選択していることがわかる。これはもちろん、マネジメントの力も大きいとは思うが、しかしどの番組でもしっかり自分の立ち位置を理解して動くことができている。  ハーフタレントとしての仕事をこなしているだけでは、その先もハーフタレントとしての仕事しか来ない。いじめられっ子であったユージが自らの生きる居場所を決めたように、ときにハーフタレント枠の仕事を蹴ってまでも、新しい居場所となる仕事を見つけるというのは重要だろう。 (2)謙虚な姿勢を打ち出す  『マミー』の中に、こんなエピソードがある。小学生時代、クラスで自慢大会がブームになった時期、ユージは自慢することがなく悲しい思いをしていたそうだ。そこで母親に相談してみたところ、自分の曾祖父がドミニカ共和国の元大統領だったという事実を初めて知り、自信満々にそれをクラスメイトに自慢するのだが、ウソつき扱いされてさらに孤立してしまったというのだ。  ハーフタレントとしてのキャラクターは数々あるのだが、その中でも最も難易度の高いものが、上から目線でのキャラクターだ。確かに火がつくのは早いのだが、顔やスタイルのよいハーフタレントがそれをやってしまうと、無意識下にコンプレックスを抱いている日本の視聴者からは反感を買うことが多い。そして火がつくのが早い分だけ、消費される速度はそのぶんだけ早く、このキャラクターを保ったまま芸能界を長く生きていくのは至難の業だといえるだろう。  この辺りユージは、小学生時代の自慢大会の記憶もあってか、謙虚な姿勢を決して崩さない。たとえば『趣味の園芸』に出演する際も「ちょっとやっていいですか、ボクも」とあくまでも園芸初心者の立ち位置を守り、また共演者がおかしなことを言った際はツッコミを入れながらも「いや、ボクは好きですけど」とフォローを付け加えることを忘れない。これはユージ本人の性格的な優しさというのももちろんあるのだろうが、この謙虚な姿勢を崩さなければ、長く必要とされるタレントでい続けることができるはずだ。 (3)個としてのキャラクターに成長する  『マミー』という自伝的小説は、一人の少年が個としてのアイデンティティを持つまでの物語だ。母子家庭となり、いじめられっ子となり、ヤンキーになる。これらはすべて個としてのアイデンティティではなく、カテゴリーにすぎない。そんなユージが自分を見つめ直し、そして自分自身の意志で母親との仲を修復する、つまり個としてのアイデンティティを確立するというのが『マミー』で描かれている物語だ。  ハーフタレントからの脱却において必要なのは、まさにこの部分である。ユージにおいてその転機となったのは間違いなく結婚と、それと同時に父親になったというタイミングであり、現在のユージの多くの仕事は「ハーフタレント」ではなく、むしろ「良き父親」としてのそれだ。それは例えば『趣味の園芸』での一言にも表れている。前回トマトを育てた感想を尋ねられたユージの答えは「トマト、ぼく大好きだし、息子も大好きなんですよ」というものだった。この「息子も大好き」という一言を付け加えるということが個としてのアイデンティティそのものであり、ユージが個としてのキャラクターに成長したという証だといえるだろう。  ユージの興味深い点は「ハーフタレント」からの脱却、いわばタレントとしての成長が、ユージ本人の環境の変化やあるいは人間的な成長と、そのままリンクしているというところにある。ユージ本人が人間として経験を得れば得るほど、タレントとしての幅もそのまま広がっていくことだろう。そう、ユージはまだ、成長過程にある。これまでの「ハーフタレント」が産み出し得なかったタレント像を、もしかしたらユージなら、見せてくれるかもしれない。 【検証結果】  ユージの青春自伝的小説『マミーが僕をころしにやってくる』は、母親からユージに宛てた手紙で終わっている。母親との仲が決裂し、ユージがアメリカの祖母の家で暮らすことになってからも、母は遠くからユージのことを見つめていたそうだ。その手紙の一節にはこうある。「おばあちゃんの家で花を育てていると聞いた時は、涙が出るほど笑ったことを覚えています。」と。人も、花も、育てるのは難しい。いつだって思うようにはいかないし、時間も忍耐も必要だ。それでも諦めてはいけない。育てることを諦めなければ、いつかきっと、花は咲くのだ。 (文=相沢直) ●あいざわ・すなお 1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。 Twitterアカウントは @aizawaaa

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