最近、韓国で急激的に伸びている市場がある。賞味期限切れの食品や、キズや損傷などがある“ワケあり商品”を取り扱うB級市場だ。 例えば、京畿道に本店を持つアウトレット家電店「オールランド家電家具」は毎年20%以上も売り上げが増加し、順調に店舗数を拡大。いまや、全国に12店舗展開されるほどになった。IT機器専門の「デジリウォ」は。会員数が25万人にもなるという。在庫品を安く売るという意味の「テリ・モール」(http://www.thirtymall.com/)は、2年前に7,000人だった会員数が7万5,000人に増加。流通期間が迫った商品だけを専門的に扱うとしてその名が付けられた「インパク(切迫という意味)モール」(http://imbak.co.kr/)も、2011年のオープン時比で会員数が245%増加しているのだ。 なぜ今、韓国でB級市場が伸びているのか。ひとつはやはり、価格帯の安さがある。韓国のB級市場は、流通期限や賞味期限が切れたものや、形が悪い果物やキズがついた商品、リファビッシュ(展示品や中古品を整備して再販売すること)商品の3本柱でなるが、とにかく安いと評判だ。リファビッシュされた電化機器は定価よりも30~70%安く、賞味期限が迫った菓子類などは最大90%のディスカウントもある。家具、家電はもちろん、普段の食事までB級商品で済ませている者も少なくないという。 また、業者側にとってもB級市場が伸びるのはありがたいらしい。というのも、昨今は新製品の出荷サイクルが短くなったことで新製品がすぐに旧製品となって在庫が増えるだけでなく、オンラインショッピングの増加で配達中にキズや不具合が起きる返品トラブルも増えていた。韓国ではそうした中古取引市場規模が10億ウォン(約1億1,100万円)あるとされているが、それらをリファビッシュすることで再流通できるようになったというのだ。 特に賞味期限が迫ったB級食料品は、「韓国経済の助けになっている」という経済学者もいる。そもそも韓国の国内メーカーは、自社のイメージ管理や万が一に備え、賞味期限が切れた商品は破棄することを原則としている。そうして破棄される食品の総額は年間700億ウォン(約77億4,000万円)ほどにもなっていたが、B級市場で流通されることになって、そうしたムダがなくなったというのだ。 つまり、消費者の立場では低価格で商品を手にでき、製造業者や流通業者は在庫負担が減り、新たな収入を得られるという構図。そのため、「B級市場は、捨てるはずだった7,000億ウォン(約774億円)を、価値ある7,000億ウォンにしている韓国経済の孝行息子だ」と称賛する声もある。 ただ、B級市場が急激に伸びているのは、長引く不況のせいでもある。不況が続き、景気がさらに悪化することを不安に思う消費者たちは、当然、格安に走る。安さを求めるからこそ、賞味期限切れやキズモノなどの“ワケあり商品”にも抵抗がなくなってきているのだろう。一部の韓国メディアは、不況を意味する「recession」と消費者を意味する「consumer」を組み合わせて「recessumer」という造語を作り、B級市場の活況を称賛しているが、手当たり次第にB級商品に手を出す今の風潮は不況の裏返しでもあるように思えてならない。 活況のB級市場が映し出す、韓国経済の光と影。国まで、キズモノや賞味期限切れのB級品に成り下がらなければいいのだが……。「テリ・モール」より
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業者も消費者もWin-Winだが……韓国で“ワケあり”B級市場が急成長しているワケ
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