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女優・松岡茉優のロケが面白すぎる3つの理由 フジテレビ系『正直さんぽ』(4月11日放送)を徹底検証!

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ヒラタオフィス公式サイトより
 ここ数年、いわゆる“女性タレント枠”は群雄割拠の時代が続いている。女たちが血で血を洗う、まさしく戦国時代だ。今年2月に放送された『時間がある人しか出れないTV』(TBS系)で真のワイプ女王に輝いたベッキーを筆頭として、指原莉乃や嗣永桃子、菊地亜美といったアイドル勢、ローラやSHELLYなどのモデル勢、鈴木奈々をはじめとするおバカ勢、そして小島瑠璃子やおのののかなどのグラビア勢の躍進も目覚ましい。そんな戦いに今、ひとりの女優が足を踏み入れようとしている。若手女優、松岡茉優がその人である。  もともとは子役としてキャリアを始めたが、脚光を浴びたのはテレビ東京『おはスタ』。ここでバラエティの感覚を培った松岡茉優は、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』への出演で一気にブレイク。数々の映画やドラマにも出演し、女優としての評価も高いわけだが、彼女の実力はそこに留まらない。それが明らかになったのが、4月11日に放送された『正直さんぽ』(フジテレビ系)だ。この番組において松岡茉優は、ロケタレントとしての才能を見事に開花させている。  『正直さんぽ』で松岡茉優が出演する回は『正直女子さんぽ』と銘打って、柳原可奈子と関根麻里と一緒に街を散歩するという主旨の番組である。ずんの飯尾和樹もお目付役として出演。極めて実力の高い布陣となるメンツではあるが、それでも松岡茉優の存在感と結果の残し方は目を見張るものがある。決して負けていない、どころかしばしば共演者を食っている。ロケという戦場において、松岡茉優の魅力は見事に炸裂しているのだ。 ロケにおける松岡茉優の魅力は、いわゆる“女性タレント枠”の近年の活躍とは少し違うところにある。ワイプという手法が当たり前になった現代のテレビにおいては、天性の才能ではなく、研ぎすまされた技術力が必要とされているのが実情だが、松岡茉優のロケに技術はない。むしろ天性の人間力で見せている。これはかつて“バラドル”と呼ばれた人々のやり方に近い。例えて言うならば、井森美幸の系譜を引き継いでいる。それは技術というよりも、人としての面白さを打ち出すという手法だ。松岡茉優はいわば、先祖返りした稀有な存在だと言えるだろう。  それでは、ロケにおける松岡茉優の一体どこがすごいのか? 彼女のロケが面白すぎるのは、一体なぜだろうか?以下、3つの点に分類して論じていきたい。 (1)独特の言語センスが面白すぎる  番組の性質上、さまざまな店を訪ねて料理を食べるという場面が多々あるわけだが、そのときに述べる感想がいちいち独特である。たとえば「もちパイ」という、中がアツアツのお菓子を食べたときの感想はこうだ。 「とろっとしたのが中に入ってて、それがマグマなんです」  熱さをたとえるときに、「マグマ」という単語をすぐに繰り出せる人間はそうはいない。さらに言えば、普通こういった際は「マグマみたいなんです」とたとえるわけだが、それを省略して一気に「マグマなんです」と言い切る。これは、技術でできることではない。天性の勘で、自身の感情を最短距離で見つける。これは、女優としてのセンスとしか言いようがない。通常の食レポの常套手段とは異なるが、しかしこれこそが、松岡茉優の個性でもある。このほかにも、 「私、塩分大好きなんで」(店頭に並んだわさび塩を見つけて) 「よかったぁ、成長期で」(ステーキがたくさん食べられる自分の胃を評価して) 「男の子の発想ですよ!」(鉄板焼きのステーキをパンの上に載せるというアイデアに対して) など、ちょっと名言がすぎる。ある意味で出川哲朗的なテイストも感じさせるわけだが、弱冠20歳の女優が発言することによって、それはツッコミどころではなく、シンプルな魅力となる。この独特の言語センスは、やはり松岡茉優ならではのものだ。 (2)無言のリアクションが面白すぎる  ワイプ全盛時代の現在において、基本的には無言というリアクションはあり得ない。よっぽどのことでもない限り、その場で求められた的確な言葉を発して、カメラを自分に向けさせるというのが現代の主流である。  だが松岡茉優は、ワイプタレントとは一線を画している。あまりにも堂々と、無言でリアクションを行う。たとえば柳原可奈子がおかしなことを口にしたとき、何も言わずに目を見開いて「?」という顔を向けるというリアクションを披露する。決して出しゃばらない。そしてそれは、言葉によるツッコミが応酬する現代の流れとは別軸にあり、どこか懐かしく、ほっとさせてくれるものでもある。  おいしいものを食べたときもそうだ。ステーキ店で肉を食べた際、何も言わずに無言でガッツポーズをする。それだけで、おいしいということは伝わるのだった。想いを伝えるのに、言葉が必要だというのは錯覚である。松岡茉優は言葉に頼らず、表情や動きで感情を表現する。それは、女優としての顔も持つ松岡茉優だからこそできる、新たなリアクション像なのだ。 (3)無意識な自然体が面白すぎる  すでに述べたように、松岡茉優のロケの面白さは、人としての面白さだ。もちろん『正直さんぽ』の独特な自由な雰囲気がそれを可能にしているわけだが、それでもやはり、松岡茉優の無意識な自然体はちょっとどうかと思うくらいには面白い。たとえばこの回は、いちご狩りでいちごを食べる。そのときの松岡茉優の感想はこうだ。 「目がしみるぐらい! あん? 目がしみる……? (気付いて)目が覚めるぐらい甘いです!」  完全に間違っている。人はあまり、いちごを食べて目がしみるということはない。だがまあ、そこはよい。重要なのは、この間違ったセリフを口にした後に、一切何もなかったかのようにそのまま次の動作に移るという点だ。ここで、誰かにツッコミを入れさせたり、あるいは自分で、おかしなこと言っちゃった的なフォローを入れることがない。ここがすごい。つまり松岡茉優は、笑いを取りに行っているわけではない。カメラの前で、そのままの姿で、普通に過ごしているのだ。  それが最も分かりやすく映ったのが、同じくイチゴ狩りの場面だ。松岡茉優は「あれ食べたい!」と少し遠くのイチゴを目にして畝(うね)をまたぐのだが、そのときに完全に尻をカメラに向けている。共演者や視聴者どころか、カメラすら気にしていない。だが、それがまったくく下品ではないのだ。松岡茉優にはよこしまな気持ちなどなく、ただ単純に遠くのイチゴを取ろうとしている。その純粋な欲求が伝わるからこそ、下品には映らない。女性タレントというよりも、むしろ子どもや動物を見る感覚に近い。この無意識な自然体は、やはりほかのタレントでは真似ができないのだった。  松岡茉優は人間の面白さを見せる。そのロケのスタイルは現在の主流とは少し離れているが、しかしどこか懐かしい面白さにあふれている。この純粋な面白さは、これから先どのような形で進化を遂げるのか。いずれにせよ松岡茉優、2015年再注目の女性タレントであることは間違いないだろう。 【検証結果】  冒頭でも述べた通り、現在の“女性タレント枠”に最も必要とされている資質はワイプにある。あるいは、ワイプは女性タレント、ロケは芸人さん、という形での棲み分けが暗黙のうちにされている空気があると言っていいだろう。そしてワイプ芸とは、批評的な感覚が必要とされる。もちろんその感覚とそこで研ぎすまされた技術は評価されるべきだが、テレビはそれだけではない。ひな壇では輝かない才能もある。松岡茉優という才能はまさしくそういった種類のものであり、これから先、ロケという戦場で彼女が新しいテレビのあり方を提示してくれることを願ってやまない。 (文=相沢直) ●あいざわ・すなお 1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。 Twitterアカウントは @aizawaaa

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