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春である。旅行シーズンである。
折しも、そのシーズンたけなわの時期、編集部から韓国取材の依頼が舞い込んだ。うれしさ2割、不安8割というところだが、案の定、しょっぱなからその計画は大幅に狂うことになった。
円安になっても、“ソウル2泊3日1万4800円!!”なんて激安ツアーはなくならない。当初、そんな激安ツアーで行こうかと予算を見積もった。しかし、ツアーの料金は、2人1部屋の代金設定が多く、お一人様の場合は追加料金1泊5,000円以上ってところがほとんどなのだ。
さらに、フライトの時間も激安ツアーは午後出発便が多く、午前中にずらすと、さらに追加1万円。そして一番の問題は、広告に出ている激安ツアーは、とっくに売り切れていて、結局、往復の飛行機代と宿代だけで予定の2倍にもなってしまうのだった。「激安ツアーで行ってきました体験」は、早々に未確認に終わることになってしまった。
その韓国だが、事前情報で気になるニュースが入っていた。ソウルで現在も建築中の「ロッテワールドモール」が、竣工前にして早くも崩壊の危機と煽られているのだ。その内容というのが、“天井に走る亀裂や水族館の水槽からの水漏れ”などが続々と発見され、ネットでは「あそこに行くのは自殺行為」だとか、不謹慎にも「123階建てのセウォル号」とまで揶揄されているのだ。
そんな場所なら、行って見て来なくてはならない。週末、現場に向った。
ロッテワールドは、地下鉄蚕室(チャムシル)駅から直接地階にアクセスできる。改札を出て右に進むとデパートや遊園地のあるロッテワールドへ、左が問題の第二ロッテワールドモールへと続く通路となるのだが、その地下通路の状況が、「ウワサは事実」と物語っているかのようだった。というのも、右側の通路はけっこうな人ごみなのだが、左側に続く通路はガラガラ。この大胆なまでの格差こそ、ソウル市民の偽らざる心境ではないのだろうか。
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デパートや遊園地のあるロッテワールドに通じる通路。ソコソコの人ごみがある。
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第二ロッテワールドモール付近の通路。人ごみの差は歴然だ。
そこらへんのウワサを現地ガイドのP氏に聞くと、予想もしない答えが返ってきた。
「ロッテは日本ではお菓子メーカーとして有名ですが、韓国ではもともと不動産や建築で財を成した企業です。そのロッテが建築でヘタを打つわけがないんです。そのウワサというのは、敵対するサムスンが流したんじゃないかというのが、一部でささやかれています。というのも、サムスンも2009年に永登浦(ヨンドンポ)にショッピングモールの『タイムズスクエアー』を開業しているんですが、その業績が芳しくない。そこで、ライバルの醜聞を流して、客がそっちに流出しないようにしているんじゃないかというんです」
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モール内を普通に歩く限りでは亀裂などは見つからないが、土曜日なのに客が少ないようにも思えるのは先入観からか。
かの“ナッツリターン”騒動でも問題になった韓国の財閥問題は、こんな形でも市民を疑心暗鬼に陥れている。果たして真相はどっちなのか?
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正面が建築中のロッテワールドモール。右に映っているのがロッテデパート。
(写真、文=松本雷太)