元祖フリーアイドルで声優のルンルンこと宍戸留美さんが、自らカメラマンとしてかわいい声優さんたちの写真を撮り、さらにアイドルライターの私(小明)がインタビューする不思議な連載の28回目! 今回は「ロリータ18号」の元ギタリスト、『がんばれ!おでんくん』では、つみれちゃんやペロの声優をしているエナポゥさんが来てくれました!
――エナポゥさんはギタリストでボーカリストでイラストレーター、さらに声優業までされているんですよね。今日はいろいろご教示ください!
エナポゥ(以下エナ)いやいや、それで忙しくてあたふたしているっていうならアレですけどね、なんかもう自由に生きているだけな感じです……。
――芸歴は今、何年くらいになるんですか?
エナ 芸歴? 何から始めて芸歴と呼ぶか…バンドを始めたのは高校の軽音部からですね。でも、それは芸歴に入るのか!? 「ロリータ18号」に入ったのは1991年かな。
――ということは……23年! 思い出の引き出しもたくさんありそうですね。
エナ もうね、記憶が曖昧で、引き出しが開かなくなりつつあるんで、フフフー。
――昔から芸能に興味があったんでしょうか? 例えば子どもの頃とか。
エナ いやいや、子どもの頃は、人見知りでモジモジしていて、石をひっくり返して遊んでいるような子でした。石の下のジメジメした場所に生息する虫を見て「ひゃー!」って。
――わりとヤバイ! 高校は軽音部で、小・中学の部活はどんなものを?
エナ 小学校のときはローラースケート部に入って、屋上でローラースケートをしていました。
――エキサイトするとそのまま墜ちそうで恐いですね。
エナ で、中学のときは卓球部に入ってました。多分、黙々と一人でやることが好きだったんですね。壁打ちとか、素振りの練習とか。でも、うまくはならなかったです。やっぱり、一人でやらないで、うまい人とみんなでやらないと!(笑)。だから、卓球は長続きせず、中2のときに自宅の物置にギターがあるのを発見して、それでギターに目覚めた感じですね。パパさんが若い頃に友達から買った、モズライト(ギター)とアンプで5,000円のやつだったんですけども。ホラ、石の裏の虫を探しているような子だったので、物置の中をゴソゴソと「何があるかな~」ってやってたら「ギター見つけた!」って(笑)。
――そのギターとの出会いから、やがてプロのギタリストになるなんて、映画のオープニングのようですね。
エナ そうですね。映画化してもいいぐらい。してください、ぜひ!
――サイゾーにそんな財力はないです! お父さまもギターがうまかったんですか?
エナ それが、パパさんは『禁じられた遊び』しか弾けなかったんですよ。チューニングも全然わからないって言われて、しょうがないから、かき鳴らすくらいでジャーンってメチャクチャ弾いてて。それから高校受験があったので、うちのママさんが「高校に受かったら自分のギターを買ってあげる」って言ってくれて、高校から本格的にやり始めたんです。カセットテープつきの教本とかで勉強して……カセットってところで、すごく年がわかっちゃう感じですね(笑)。
――高校の軽音部は、どんなバンドを組まれてたんですか?
エナ 私の学年の軽音部にはバンドが2つしかなくて、あんまりメンバーもいなかったんですよ。だから2つのバンドを掛け持って、JUN SKY WALKER(S)とかカステラとかTheピーズとかのコピーをして……これもまた世代がわかっちゃう感じですね。フフフー。でも、そこでみんなでバンドをやる楽しさを知ったんです。
――その後、すごく良い大学(当社比)に進学されましたよね。すごいですよ。音楽をやりながら勉強もって。
エナ 一応、進学校だったんで、なぜか推薦入学で入れちゃって……。そこの大学がわりとバンドが盛んなところで、サークルで知り合った当時ロリータでドラム叩いてた子に「ロリータ18号ってバンドがあるんだけど、ベース弾かない?」って誘われて「ベースならヘルプでもいい?」みたいな軽い感じでロリータ18号に入ったんです。その後ギターになったんですけど。
――おお~! 伝説が始まった感! しかしながら、良い大学ですし、大学卒業後に就職しようとは思わなかったんですか?
エナ すごい思いましたよ、5時に帰れるから公務員とか! 将来をいろいろ考えて、みんな就職活動をしているときに、ママさんに「バンドをするか、就職をするか」って相談したら「エナちゃんはスーツが似合わないから、バンドでいいんじゃない?」って言ってくれて。そっから、バンドやりながら、バイトをして、ライブをやったりして。
――かっこいいお母さまですね! それからロリータ18号としてBENTENLabelからリリース、メジャーデビュー、海外でのメジャーリリース、全米ツアー、ヨーロッパツアーと怒濤の日々を送るわけですが、ガールズバンドということで、アイドルグループみたいに“恋愛禁止”みたいなのはルールはありましたか?
エナ なかったなかった(笑)。かと言って、恋愛ができるかっていうと、ずっとライブの全国ツアーとかで休み無くて、家にも帰れない状態だったから家賃ももったいない感じだったんで。ほんと家賃返してほしいよ~。
――1年のうち、家にいる時期はどれくらい?
エナ 1/3くらいかな~。でも、家にいる時も曲作ったり、あとレコーディングしたり取材があったり、なんだかんだで忙しくて、あの頃が人生の忙しさマックスだったかな。
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――いやらしい話なんですけど、その忙しさマックス時で、どれくらい儲かっていたのでしょうか……?
エナ 全然儲かっていないですよ! その頃、事務所が給料制だったんですよ。「給料制と歩合、どっちがいいか?」って言われて、給料制にしてたから!
――おお、わかりますよ。売れていない時は安定を求めて給料制がいいけど、忙しい時期は給料制が憎らしくなるんですよ。
エナ そうそうそう(笑)!
――メンバー同士でケンカになったりはしないでしょうか?
エナ 殴り合いになったりはしないけど、ライブで「あそこのテンポが早かった」とか言い合いみたいなのはあったかも。でも、家族よりも一緒にいる時間が長いから、もうお互いに細かいことは気にしなくなって空気みたいになってきますね(笑)。
――その、10年続けたロリータ18号を辞めたきっかけは?
エナ 辞めたきっかけは、本当にライブばかりやって、ロリータ18号で自分がやりたいことはやりつくしたかなと。ドラクエで言ったらレベル99まで行っちゃったよ、みたいな。それで「もう後悔はない。転職しようかな」とダーマの神殿に行ったわけです。
――ロリータ18号のページに「もも栗3年柿8年、エナポゥ10年。エナポゥは人生の節目をつけることにしました!」ってものすごい元気に書いてあって、全く悲壮感のない脱退発表でしたね。
エナ 悲壮感なんて、ないない! ないですね! 辞めて、フリーというか、全部において自由になったんです。そして辞めたのが2001年の12月8日だから、もうずいぶん経ちましたね~。ヤバイ!
――当時、名前はまだエナゾウさんでしたよね。なぜエナゾウからエナポゥに変わったんですか?
エナ エナゾウは、画数が12なんですよ。私、占い大好きで、姓名判断とかすごい気にしていて、エナゾウだと年をとるたびにどんどん衰退していく、波瀾万丈で大凶だったんですよ。だから、辞めるときに13画になったらいいなと思って、エナポゥに変えて。エナポウのウは、大きいとあんまり可愛くなかったんで、小さく。でも、エナゾウのほうがまだ日本人ぽいのかな。エナポゥってまず、「ナニ人ですか?」って聞かれます。
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――“ポゥ”にパンチがありすぎるんですよ! その後、どういうきっかけで声優に?
エナ 声優になったきっかけね! そのときのことはすごくよく覚えているんです。ロリータ18号時代に文化放送で『インディーズ大辞典』って番組をやらせていただいてたんですけど、そこに宍戸留美さんがゲストで来てくださって。そこで「アニメ監督が、エナちゃん声優やってくれないかな~って言ってたよ」って伝えてくださって、「やりたいやりたい!」って。それから声優のお話がいろいろつながっていってくれて。「いつか、また留美さんに会えたら御礼をしなくては……」と思っていたら、『プリティーリズム』(テレビ東京)のオーディションで会えまして。でも、オーディションだったから、これに落ちたらまた会えないし、今のうちに全部言っておこうと思って「留美さんに会わなかったら、声優やってなかったです!」と。
――そして宍戸さんが天羽ジュネ役、エナポゥさんがラブリン・ピコック・エスニ役と、二人とも受かってるのがすごいですよね。
エナ よかったです、本当に!
――私はてっきり忌野清志郎さんの勧めで始めたのかと思ってました。
エナ そうそう! 脱退ライブのときにビデオレターをもらって、それで清志郎さんが「エナゾウは声優になるように」って言ってくださって。「やりたいのは山々だけど、なるようにって言われて、なれるものかな~」って思ってたんですけど、そのライブを見ていたアニメ監督の小林治さんが「誘おうかな」って思ってくれたのかもしれないですし。
――そこに宍戸さんも交差して、ドラマチックな人生ですね。
エナ そう! ドラマチック! また会えると思わなかったし! 初めてのアフレコのことはすごい覚えていて、マイクの後ろにみんなで座って、自分の出番になったら立つっていう緊張と、みんなすごいセリフを練習しているし、「どうしたらええんや!」ってドキドキしましたよ。私は変な声だから、「こんな感じの声でお願いします」って言われても「こんな感じでって言われても、その声、どうやって出すんだろう!」って慌てて……。声を張らなくちゃいけないけど、吹いちゃうとダメだし、みんながやっているのをマネして勉強しました。マイクに行くまでに緊張しちゃうし、台本をパタパタして音出ちゃうし、「まず手の震えを直さなければ!」みたいな。
――現場では完全に挙動不審!?
エナ そう、まさに私にピッタリの言葉、挙動不審。挙動不審な感じがモワーって出てしまう。あの、声優養成所をでたりしてる若い声優さんは、30分前には来ているし、必ず挨拶をしてくれるんですよ。多分、ちょっと年齢が上=先輩だと思ってくれてるんでしょうけども、みんな丁寧に「どこどこ事務所の誰々です!」って言ってくれるから、挙動不審になりながらも「こんなに挨拶されることってないし、ちょっと気持ちいいな」と思ったりして。フフフ
――その頃は、無所属で仕事をしてたんですか?
エナ 無所属というか、ロリータ18号を辞めてからは、ずっと事務所なし(フリー)です。
――無所属で、これだけの仕事こなせるって相当ですよ!
エナ 相当ですか? 本当ですか? 忌野清志郎先生と宍戸留美さんのおかげです。でも、私、なかなか人間の役っていうのがないんですよね。
――何の役が多いんでしょうか?
エナ 鳥です。人間では、『BECK』のときにカヨちゃんっていうかわいい女の子の役をやったけど、ペイジっていう「クギャオ!」って言ってるオウムもやったし、その後の『海底二万里』のときも鳥だった……。それから『おでんくん』の具とか、犬とかウサギが入りまして、その後の『プリティーリズム』も、あれは鳥かな? ペンギンかな? でもペンギンも鳥か。なんか、鳥類専門なんですかね?
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――国籍だけじゃくて、人類かどうかすら怪しくなってきますね……。声優業で苦労したのはどんなところですか?
エナ 自分ではそのキャラでやっているつもりが、マイクを通すと全然なっていないというか……。なんだろうな? 恐らく、誰もが一度は経験する、マイクの前で何度も同じことをやって、どんどんハマって、蟻地獄のように、「すみません、すみません」ってなる感じ? あれが大変です。自分ではいいと思ってやっていることが「違う」って言われるんですよ。それでわかんなくって、噛んじゃったりとか。で、「もう何やってんだぁ、パタパタパタパタ(手を振りながら)」みたいな。
――あ、鳥っぽくなってる。
エナ そう、ほんとに鳥っぽくなっちゃう。
――仕事で落ち込んだときは、どのように解消されるんですか?
エナ お酒を飲むしかない(即答)。飲んで忘れるというか、「そんな日もある!」とか「ダメだったのかもしれないけど、OKが出たんだからOK!」と自分で納得して。でもOA見て、「ひゃーもう一回やりたい~」って!(パタパタパタパタ)。あと、すごい好きな声優さんにお会いできたときは、ふわーってなりますよ!八奈見乗児さんとか!(パタパタパタパタ)。はー、なんかもう、暑い~。
――文字なので伝わらないですけど、暑いのはエナポゥさんがしゃべりながらずっとパタパタ動いているからですよ……! 今はどんなバンドをされてるんですか?
エナ 『おでんくん』で友達になった小日向しえちゃんと“nelca(ネルカ)”っていうガールズバンドをやっていて、それが今はメインですね。しえちゃん、かっこいいんですよ。「しえちゃんかっこいいからベース弾きながら歌いなよ」って言って、組んでからベース買わせて(笑)。ゆっくりですけど、今年はライブができたらいいなって。……あ、しえちゃんと出てる『がんばれ!おでんくん』も、まだやってるよ~。民放でやっているよ~。観てくださいね~。
――声優として、今後「これに出たい!」っていう作品はありますか?
エナ そ、そうだな、『進撃の巨人』に出られたら……鳥でもいいので……。休みの日はずっとマンガ読んだり、ゲームをしたりしてるんですけど、今は進撃なんですよ。(『進撃の巨人』クリアファイルを見せびらかして)これはロッテリアで食べてもらったんですよ。フフフ。
――では、キャスティング担当者が日刊サイゾーを読んでいることを祈りつつ!
エナ 祈りつつ!
――引き続きグラビア撮影がんばってください!
エナ こんな写真が出ることないですから、脇汗すごいかいちゃって。1万枚ぐらい撮ったら、1枚ぐらいは、なんとかならないかな! ギターがないと落ち着かない感じ(笑)。
――今日はありがとうございました!
(取材・構成=小明/撮影=宍戸留美)
(余談:インタビュー直後のグラビア撮影で、エナポゥさんは「ひゃ~」「ふぁふぁふぁ」「あ~~~」などと言いながらカメラから逃げ続け、「動物を撮っているみたい!」と宍戸留美を感動させました。もしかしたら鳥だったのかもしれません。)
●エナポゥ
てんびん座、A型。フライングVを片手に世界中を暴れ回り、ロリータ18号在籍時はRAMONESのジョーイやTOY DOLLSのオルガによるプロデュースでもリリース。PUFFYのサポートも務め、現在活動中のバンドはnelca、PONI-CAMP、DUNCAN’S DIVAS(from U.K)。声優としては、TVアニメの他にナレーションやラジオDJなど。イラストは雑誌で執筆中。マンガ、占い、たれ耳ウサギ、ゲーム、麻雀、お寿司に目がない! あっちこっちにいろんな意味で進撃中!
エナポゥ 公式ツイッター
https://twitter.com/ENAPOu
PONI-CAMP 公式サイト
http://poni-camp.net/
●ししど・るみ
1973年、福岡県生まれ。1990年にアイドルデビュー、18歳でフリーアイドルになり現在まで様々な分野で活動中! フランス、ドイツ等でもライブを行い音楽活動で高い評価を得ている。
ルミネッセンス
形態:8曲入り
定価:¥2,500(税込)
品番:SNDL-0003/JAN:4514306011869
レーベル:sundaliru
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公式ブログ
http://s.ameblo.jp/sundaliru/
●あかり
1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。『卑屈の国の格言録』(サイゾー)、『アイドル墜落日記 増量版』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。ブログ「小明の秘話」<
http://yaplog.jp/benijake148/> サイゾーテレビ<
http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中。ニューシングル「君が笑う、それが僕のしあわせ」発売中<
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