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狙いは医療費抑制か――日本人間ドック協会の「新基準」で健康な人が増える!?

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「ニューズウィーク日本版」4月22日号
今週の注目記事 第1位 「頼りない超大国」(「ニューズウィーク日本版」4月22日号) 第2位 「『日経が好景気と書くと株価が下落する』のは市場のプロの常識です。」(「週刊ポスト」5月2日号) 「アベノミクスを見限る外資『セル・イン・メイ』が迫る」(「AERA」4月28日号) 第3位 「『血圧147は健康』で『病人1800万人減』のカラクリ」(「週刊ポスト」5月2日号) 第4位 「ノーベル賞学者が怒った『小保方さんは科学者失格!』」(「週刊文春」4月24日号) 第5位 「最新兵器ED衝撃波であなたがこんなに固く、強くなる」(「週刊現代」5月3日号)  皐月賞は単勝2番人気のイスラボニータ(美浦・栗田博憲厩舎)が1番人気のトゥザワールドを直線競り負かして優勝した。蛯名正義騎手(45)は、19度目の挑戦で皐月賞初制覇である。  イスラボニータは6戦5勝。唯一負けたのが先週桜花賞を制した牝馬のハープスターだから、ハープのすごさがわかろうというものだ。今年の競馬界は、ハープスターを中心に回ることは間違いない。  今週は小保方晴子問題が一段落したので、これといった目立った記事のない静かな誌面が多い。こういう“平時”のときには企画もので勝負する現代やポストの腕の見せどころであるが、さてどうであろうか。  現代の巻頭は「大激論 だから日本の理系はダメなんだ!」だが、今ひとつ食指が動かない。  創刊55周年スペシャルヌード「女優ヌード傑作選」は、懐かしいが新鮮さに欠ける。袋とじは、やはりこれまで現代でやってきた袋とじの傑作選だが、この中に私がやった懐かしい袋とじが入っている。  97年7月19日号の「二度と見たくないヌード」が、それである。これは何回目かの「二度と──」だと思うが、この袋とじは私が考えたタイトルで、最初にやったときは完売になった。  ここでも何度か書いているが、袋とじはいいグラビアがないときの苦肉の策であることが多い。このときも売り物になるヌードがないので、どうしようかと考えていて浮かんだ「タイトル」であった。  グラビア担当者が「中身は何にしましょう?」と聞いてくるので、サッチー(失礼!)なんかの「こんなのは二度と見たくないな」という雰囲気のヌードを集めて入れてくれと指示したが、詳細は任せた。タイトルの勝利で、発売当日、あっという間にキオスクからなくなった。  さて、今週の現代で読んでみようと思わせるのは「死ぬまでSEX」のバリエーション企画である「ED衝撃波」で固くなる、強くなるという最新情報である。  用いるのは、体外衝撃波治療機器・ED1000。日本ではわずか10カ所ほどのクリニックが1~2年前から導入し始めたばかりの治療法だという。順天堂大学や広島大学を中心に、より詳しい研究が行われている真っ最中だ。  ED1000を日本に輸入している代理店「メディテックファーイースト」の担当者によれば、ヨーロッパでは2010年に販売が開始されたばかり、アメリカではFDA(アメリカ食品医療品局)の認可を今年中に取得して、一気に販売が開始される見込みだという。これまでED 1000による治療を受けた人は、全世界でまだ4,000名ほどだそうだ。  この治療をやっている上野中央クリニックの石井進昭氏によれば、実に99%の人の勃起力が改善しているという。  現代の記者氏が体験している。実物は1メートル四方程遠の予想以上にコンパクトなもの。そこから伸びたパイプの先端には、マイクのような形状の器具が付いているそうだ。記者氏のパンツを下ろし、ペニスにたっぷりとゼリーを塗る。陰茎の根元の左右、中央と、陰茎の真ん中あたり、それに亀頭付近の5カ所にそれぞれ300発ほど打ち込むのだという。一回20分ほどで計1,500発。これを3週間で6回行い、3週間何もせずに休んだ後、再び3週間で6回行う。2カ月ほどの治療期間となるが、痛みも副作用もないし、飲み薬を服用する必要もない。  南部氏によると、衝撃波を打つと、ペニスを走る血管が拡張しやすくなり、血液の充満が起こりやすくなるどころか、ペニスの毛細血管が新しく伸びる「血管新生」が起きてくるそうだ。衝撃波によって、血管を増やす因子が出てくると、ペニスの中にある海綿体に数多くの血管が生まれてきて、血流が滞った血管の周りに、毛細血管のバイパスが張り巡らされて血流がよくなり、ペニスも固く育つというのだ。  だが、問題は治療費の高さである。上野中央クリニックでは37万8,000円、ABCクリニック東京新宿院では43万2,000円である。効き目は5年ほどだというが、あなたならどうしますか?  ついに、小保方晴子さんの“ケビン・コスナー”氏が4月16日に登場した。「週刊文春」(3/27号)「小保方晴子さん乱倫な研究室」でこう書かれた人だ。 「疑惑が浮上し始めてから、笹井(芳樹=筆者注)先生は『僕はケビン・コスナーになる』と語っていたそうです。ケビン・コスナーが主演した『ボディガード』のように、小保方さんを守り続けるという意味なのでしょう」(理研の元同僚)  笹井氏は「ネイチャー」誌の論文の共同執筆者だから、記者会見は注目を集め、3時間にもおよんだ。  笹井氏は冒頭、論文に関して疑惑を招く事態となったことは申し訳ないと謝り、信ぴょう性に疑惑を持たれた小保方論文は撤回するほうがいいと言った。  だが、自分はあくまでもアドバイザーであり、小保方さんとSTAP細胞研究の中心的役割を果たしたのは若山照彦現・山梨大学教授だと、責任転嫁ともとられる発言に終始した。態度、口調はさすがエリート科学者と思わせるものがあり、記者たちの不躾な質問にも嫌な顔ひとつせず丁寧に答えていた。  そして、核心のSTAP細胞はあるのかという質問には、「合理性のある有望な仮説だと思っている」と、口調は柔らかいがハッキリと言い切ったのである。  病院で聞いていたオボちゃんは、「やった!」と喝采を送ったのではないか。  オボちゃんの援護射撃はこれだけではなかった。  この時期、STAP細胞の論文の主要著者である米ハーバード大チャールズ・バカンティ教授も来日していたのである。京都で講演するためだったそうだが、彼は「(STAP細胞の)発見全体を否定するような決定的な証拠がない限り(論文を=筆者注)撤回すべきだとは思わない」とコメントしたという。  また、オボちゃんに「ハーバードに帰っておいで」とエールを送ったというのだ。小保方晴子のジジイ殺しのテクニックはただものではない。  今週発売の各週刊誌もこの問題を取り上げてはいるが、今までと大差ない。  やや変わったところで文春が、2010年にノーベル化学賞を受賞した根岸英一氏に、小保方は研究者として失格だと厳しい意見を言わせている。これが今週の第4位。 「科学者が間違いをおこすことは当然あります。その場合は、正直に間違いを正すというプロセスが科学にはあり得るわけです。しかし、多少でもそれ(間違い)が意図的に行われたとしたら、科学の世界では犯罪です。科学者失格なのです。  小保方さんには論文のコピペ疑惑も出ています。科学では、コピペしたら、それはもう偽造です。私は何十年もの間に何百本もの論文を書いてきましたが、コピペなど微塵も考えたことはありません。偽造は嘘つきですから、もしそれがはっきりしたら、彼女は科学者としては失格だと思います。そういう方は最初から研究してはいけない人間だと」  さらに、小保方さんが「STAP細胞は200回以上成功しています」と明言したことも、こう批判する。 「ならば公衆の面前で実験してみせればいい。(中略)どんなに複雑な実験であっても、再現できない実験だったら公表することは許されないのです。再現できないということは、間違いか意図的な嘘のいずれかであるはず。そして、意図的な嘘だったとすれば、彼女の科学者としてのキャリアは終わりなのです」  そして文春は、小保方さんの会見でのこの発言を、責任転嫁だと難じるのだ。 「『STAP幹細胞』につきましては、ちょっと私は苦手としていて、若山先生は非常にお得意とされていて、現存するSTAP幹細胞はすべて若山先生が樹立してくださったものです」  これは某国立大学教授によれば、全部若山先生がやったことで、私は細胞が200回緑色に光ったのを確認しただけ。後は若山先生たちにやっていただき、論文の筆頭著者の地位は私がいただきましたと言っているのと同じだというのである。  先にも書いたように、笹井氏も会見で、私は最終段階のチェックだけで、それまでは若山先生がやっていたと、暗黙の内に責任は若山先生にあるとしていた。これは小保方さんと笹井氏が“意図して”やっていることなのだろうか。  その若山氏は疑惑が浮上した後、「小保方と笹井氏が二人三脚で研究や論文を仕上げていく過程で、完全に除け者にされていた」と語っているのだ。  若山教授だが、文春によると心労からかげっそりやせていて、「何も話すことはない」と言って足をふらつかせながら去って行ったという。  コトの真相などわかりはしないが、今回の騒動を私なりに総括してみようと思う。小保方さんも自ら認めているように研究者としては極めて未熟で、最低限の知識もなかったことは間違いない。  笹井氏が彼女の発想力を高く買っているが、そうならば、研究者としてではなく、企画プレゼンターのようにして使えばよかったのである。  小保方さんの“色香”や付けまつ毛、ヴィヴィアン・ウエストウッドの指輪に見とれて、STAP細胞のなんたるかを検証もせず、世界的な発見だ、ノーベル賞ものだとバカ騒ぎしたメディアの罪も重い。  理研の対応の遅れや不十分な調査、共著者なのに論文の稚拙な間違いさえチェックできなかった、あまりにも無責任な笹井氏の態度も責められて然るべきである。  だが、これらのことと、STAP細胞の可能性については分けて考えるべきだ。  私は笹井氏の話を聞いていて得心がいった。STAP細胞は大きな可能性をもった「仮説」だったのだ。にもかかわらず、斯界の第一人者たちが共同執筆者に名前を連ねて「ネイチャー」誌へ論文を寄稿し、その人たちがそろって記者会見したことで、iPS細胞を超える万能細胞がすぐにでも実用化するとメディア側が勝手に“勘違い”し、国民もそう思ってしまったのだ。  研究者としては「ノーベル賞」ものの研究だと騒いでくれたほうが予算が付きやすいから、あえて騒ぐに任せたのではないか。  実際のところ、STAP細胞研究は笹井氏の言うように、まだ緒に就いたばかりの「仮説」なのだから、これからうんざりするほど長い時間をかけて検証していかなくてはいけない。コペルニクスが地動説を言い始め、ガリレオが地動説に有利な証拠を多く見つけたが、それをニュートンが完成させるまでに100年以上かかっているのだ。  日本の再生科学の分野では第一人者の笹井氏が本当に「STAPは有望で合理的な仮説と考える」のならば、笹井氏を中心とした研究チームを作り、あと何十年かかろうとこの研究を続けさせるべきだと思う。  万が一にもSTAP細胞を作ることに成功し、実用化できれば、今回のことで地に堕ちた日本の科学技術の信用を取り戻すことができるはずである。  私事だが、長年血糖値が高くて定期的に医者に通って計ってもらっている。先月行ったら主治医から、今度基準値が変わったと言われた。  HbA1c(検査の日から1~2カ月前の血糖の状態を推定できる値。正常値は4.3~5.8%で、6.1%以上であればほぼ糖尿病型と判断してよいことになっている)が、国際的に使用されている新しいHbA1c(NGSP)値になるというのだ。  これまでのHbA1c(JDS)値と比べおよそ0.4%高くなるが、心配しないようにと言われた。  高くなっても心配ないというのはなんだか変な気持ちだが、ポストがそのへんの「事情」を巻頭特集で説明してくれている。  ポストによれば、これまでは上(収縮期血圧)が130以上、下(拡張期血圧)が85以上なら「血圧が高い」と診断されてきたが、今回公表された新基準値では大幅に緩和され、上は147まで、下は94までは正常値であると変更されるという。  最も従来の数字とかけ離れているのは、いわゆる「悪玉コレステロール」とされてきたLDLコレステロールで、現基準では120未満が正常とされたが、新基準では男性の上限が178、高齢女性ではなんと190まで拡大されたそうだ。  この調査は、日本人間ドック学会と健康保険組合連合会(健保連)が立ち上げた共同研究事業で、約150万人に及ぶ人間ドック検診受診者の血液検査データを使って、健康基準を導き出したそうである。  そうなると、新基準で高血圧とされる148以上の人は約8%だから、異常と診断される人は約22%減ることになる。現在の30~80歳男女の人口から考えると、高血圧の「病人」は2,474万人から660万近くへと1,800万人も減る計算になるそうだ。  また、悪玉コレステロールは、新基準は男女別になっているため、30~80歳の男性で考えると、従来の120以上の基準に引っかかるのは全体の約52%だが、新基準の179以上の人はたったの約4%しかいないので、ほとんどの人が引っかからないことになる。  現在、男性だけでおよそ2,361万人もいる「悪玉コレステロールが高すぎる人」が、新基準では182万人しかいないことになるのだ。  大櫛陽一東海大学名誉教授はこう話す。 「この基準が臨床に適用されれば、コレステロールを下げる薬の売り上げは激減し製薬会社には大ダメージとなる。さらに、通院する人も減るため、薬に頼る多くの開業医が潰れることになるでしょう」  なぜ、急にこんなことになるのだろうか? 医者や製薬会社にとって痛手になることをできるのは、お上しかいない。その真意は「医療費の抑制」であろう。基準値を緩和して「健康な人」を増やすのは世界的な傾向だそうだ。  無駄な医療費や薬代が減るからいいのではないかと思うが、そうばかりではないようだ。  今回の人間ドック学会の調査のパートナーである、健康保険組合連合会(健保連)の存在も大きいようだ。  サラリーマンが加入する健康保険組合の全国組織である健保連は、近年の医療費の増加によって、収入を上回る医療費負担(支出)を強いられ、財政危機に瀕している。 「基準の緩和には、増え続ける医療費に悲鳴を上げていた健保連の、医療費を何としてでも抑えたいという狙いが透けて見えます。基準値が緩和されれば、『病人』は減り、医療費支出も抑えられますから。近年、厚労省が健康増進法を作ったり、予防医療を推進したり、軽度の病気だと医者にかかることなく自分で市販薬を買って治療するセルフメディケーションを打ち出したりしているのも、税金から支出する医療費削減が目的。今回の人間ドック学会の調査もその流れを受けていると考えられます」(医療経済ジャーナリスト・室井一辰氏)  医療費を抑制するために基準値を大幅に緩和するというが、その基準は信用に値するのであろうか。メタボ基準値もそうだったが、自分たちの都合でコロコロ基準値を変えられたのでは、こちとら“病人”は安心していられないではないか。  この問題は、海外の例を含めてもっと突っ込んで取材してもらいたいものである。  さて、円安も102円前後で行きつ戻りつだし、株価も1万4,000円前後で足踏み状態である。  だが、新聞は消費税増税の影響はそれほどないとか、景気はこれからよくなると書いているが、庶民の実感ではそんなはずはないと思わざるを得ない。  ポストはそんな空気を読んで、日経批判をしている。すなわち、日経が好景気と書くと株価が下落するのは市場のプロの常識だというのである。これが今週の第2位。  ポストによれば、消費増税による買い控えで不況風が吹きはじめた4月11日、日本経済新聞朝刊一面トップにこんな見出しを掲げて、明るい景気見通しを報じた。 「小売業7割が増収増益(今期予想) 増税の影響、下期回復」  同紙の集計によると、スーパーや百貨店など主要小売業の7割が1年後の業績を増収増益と予想しており、増税不況は夏以降急回復するという内容だった。 「ところが、株価の動きは逆だった。日経平均株価は始値の1万4027円から終値1万3960円へと67円下落し、1万4000円の壁を割り込んだのだ」(ポスト)  この報道と現実のギャップに誰より慌てたのが、安倍首相当その人だった。総理は、株価急落が止まらないことに「いったいどうなっているんだ」と非常に神経質になり、急遽、日銀の黒田総裁との会談をセットして説明してもらうことになったと官邸筋が語っている。まさに日経は“赤っ恥”をかいたのである。  もともと投資のプロは日経新聞の内容を相手にしないといい切るのはゴールドマン・サックス証券やモルガン・スタンレー証券など外資系証券会社で日本株アナリストを経験してきた島義夫玉川大学経営学部教授である。 「プロは必ず日経を読んでいますが、それは世間の『平均的な見方』を確認するためです。株など金融商品を扱う場合、先行きを見るための先行指標、今の状況を確認する一致指標、過去の状況を分析する遅行指標がある。新聞に書いてあることは昨日までの遅行指標であって、プロにはそれを取引の先行指標に使うような馬鹿はいない。日経の記事は市場関係者や専門家を取材して書いています。その手の情報はポジショントークといって、自分が扱っている銘柄が有利になるようにメッセージを出す意図が込められている。市場関係者はそのことを百も承知だから、記事を参考にはしないわけです」  ポストは、日経の記事が金融のプロから信用されていない原因が“経済音痴”にあるのなら、メディアのクオリティーを問われることはあっても、罪までは問えないが、日経の責任が重いのは、安倍政権や霞ヶ関、財界の意を汲んで「景気は回復」「給料アップ」「株価も上がる」と大本営発表を流し、結果的に国民の目からアベノミクスの失敗を誤魔化してきたことであると追及する。  さらにポストによれば、「日銀の黒田総裁を官邸に呼んで追加の金融緩和を迫り、さらにこれ以上の株価急落を防ぐために国民の老後資金である年金資金で株を買う計画を進めている。そしてその先に狙っているのは、高齢者のカネだ。安倍政権は今年1月から年間100万円までの株取引の利益を非課税にする『少額投資非課税制度』(NISA)を導入し、素人投資家を株式市場に呼び込む策を練ってきた。年金カットで収入が減る高齢者がそれに飛びつき、銀行や証券会社に新たに株取引の口座を開設する個人投資家は高齢者を中心に年内に500万人に達する勢いで、『最大で5兆円の新規資金が株式市場に流入する可能性がある』1月8日付)と見込まれている」そうである。  島氏はこう警告する。 「現実のd日本経済は株価も為替も景気も非常に不安定な綱渡りの状況です。だからこそ、日経は霞ヶ関の意を汲んで、国民に景気が回復して株価が上がると思わせるように書いている」  ポストは「日本のウォールストリートジャーナルを自負する日経新聞は、『プロだけが売り抜け、素人投資家は貧乏くじ』というアベノミクスの水先案内人なのであり、そうした“役割”を見抜いていないと、国民は痛い目に遭わされる」と警鐘を鳴らす。  AERAでもアベノミクスを外資は見限ったと書いている。 「海外ファンドは昨年末、『追加緩和が消費税前にある』と見て日本株を買い上げた。国内のエコノミストの誰もが『あり得ない』と否定したが、耳を貸さなかった。4月8日、日本銀行の黒田東彦総裁が『景気は順調に回復。追加緩和は必要ない』と言い切ったとき、“ハゲタカ外資”は追加融資がしばしの夢だったことを悟り、長期投資組は日本からの撤退を決めた。  相場の行方を大手証券のエコノミストは『「セル・イン・メイ(5月に売れ)」はやってくる』と話す。4月30日の金融政策決定会合までは株を買い、大型連休後に売る。撤退を決めた彼らは換金売りをする腹づもりだ。『日経平均株価は1万3500円を下回るかもしれない』」  アベノミクスの終焉は見えてきたようである。  その安倍首相が、“起死回生”と頼むオバマ米大統領が23日夜に来日、25日まで滞在する。  安倍首相はようやく実現したオバマ訪日に多大な期待をかけていることは間違いない。  だが、このところの米誌には“キツーイ”オバマ批判が多く載っていることを、知っているのだろうか。  「ニューズウィーク日本版」の「頼りにならない超大国の行方」は一読の価値あり。これが今週の第1位だ! 「4月23日からのバラク・オバマ米大統領のアジア歴訪は、かつてなく重要だ。オバマを迎える日本、韓国、フィリピン、マレーシアの4カ国にとっては、待ちに待った訪問と言っていいだろう。(中略)だがオバマと膝を突き合わせて話し合う際、各国首脳の脳裏には正式な議題にはない疑問がちらつくのではないだろうか。『目の前にいるのは、本当にわれわれが知っているアメリカなのだろうか』という疑問だ。そう思うのも無理はない。最近のアメリカはさながら縮みゆく超大国だ。内戦が続くシリアに対し、オバマは12年8月、化学兵器の使用は『レッドライン(越えてはならない一戦)』だと発言。バシャル・アサド大統領の行動を厳しく牽制した。ところがアサドは、そんな警告などどこ吹く風と言わんばかりに、昨年8月にダマスカス郊外で化学兵器を使用。子供を含む数百人の市民が犠牲になった。明らかに『レッドライン』を超える行為だが、オバマは断固たる報復措置を取らなかった。(中略)『アラブの春』の支援にも無関心だ。そのせいもあり、10年以降に民主化運動が盛り上がったアラブ諸国の大半で、独裁体制が返り咲いている。 オバマの『本気度』に疑問符が付いたのは中東だけではない。 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は先月、ウクライナの混乱に乗じてクリミア半島のロシア編入を宣言した。ヨーロッパで、特定の国が別の国の領土を奪うのは第二次大戦以来の出来事だというのに、オバマの反応は煮え切らなかった。アメリカとEUが対応をめぐって議論してる間に、プーチンはウクライナ国境に4万人規模の兵力を配備。クリミアに続いてウクライナ東部の町についても、『住民の希望に応えて』ロシアに編入する可能性が浮上している」(「ニューズウィーク」)  オバマの弱腰外交は国内だけではなくEUでも不安を広げ、アジアにとっては死活問題になりそうである。  アメリカの影響力が低下しているのはなぜか? その理由のうち、オバマにはどのくらい責任があるのか? アメリカの影響力低下はアジアや中東、その他の地域の同盟国にとって何を意味するのだろうか? と問いかける。 「実はアメリカの政治システムは、大統領にさほど大きな裁量を与えておらず、大統領が下す決断の多くについて、議会や裁判所などが待ったをかけることができる。だが、それにはわずかながら例外があり、その1つが外交政策だ。(中略)つまりアメリカの影響力が低下していると見られていることの責任はすべてオバマにある」(同)  つまり、プーチンのウクライナに対するやりたい放題も、習近平の中国に対して煮え切らないのも、みんなオバマの弱腰のせいだというのである。  次章「ためらうオバマ、揺らぐ日米同盟」の書き出しは衝撃的である。 「昨年11月、スーザン・ライス米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)がジョージタウン大学で行った演説は、日本だけでなく韓国やベトナム、フィリピンの要人をも驚愕させた。  ライスは『アメリカが中国に屈服すること』を恐れる同盟国をなだめるどころか、こう言い放った。 『中国について言えば、私たちは大国関係の新しいモデルの構築を模索している。競争すべきところは競争するが、アジアおよびその他の地域において、双方の利害が一致する分野では協力関係を深めたい』(中略)  ライスだけではない。オバマ政権は総じて、強行姿勢を強める中国との衝突が起きた場合は必ず日本を助ける、と明言するのを避けてきた。  しかもアメリカの国防予算は減る一方だから、東アジアでの戦略的柔軟性も損われる。『外交戦略のアジア重視の転換』など口先だけではないかという懸念が高まるのは当然だ。そもそもイラクとアフガニスタンの戦争で疲弊した今のアメリカに、世界のリーダーであろうとする意欲はない」(同)  安倍政権は必死になって日米同盟への関与を深める政策を次々に打ち出している。だがホワイトハウスはこれをきちんと評価していないという。 「これらの改革はどれも、現在の日本の安全保障に欠かせないだけでなく、日米同盟においてアメリカが以前から求めてきたものだ。アメリカは現場レベルでは安倍の改革を歓迎している。しかし政治的には中国への挑発と取られたり、『安倍に自由裁量権を与える』ことになるのを恐れており、ホワイトハウスの反応は鈍い。  安倍とオバマの間に信頼関係が確立されていないこともあって、アメリカに同盟国を守る決意はあるのか、中国と『大国関係』を目指すと表明した過ちを改める気があるのか、という疑念が日本で広がっている」(同)  オバマは今でもスピーチをさせればうまいし、高邁な理想を語ることには長けている。しかし、かつての大国ソ連を取り戻したいと考え、軍事力を使い始めたプーチンに比べると“弱腰”であることは事実であろう。  第二次世界大戦以降では初めてといってもいいウクライナへの大軍事力行使は、プーチンの野望の一端に過ぎないはずだ。そんな衰退するアメリカにすがっていては、アメリカのアジア戦略の片棒を担がされ、軍拡競争にかり出されるだけである。 「アメリカが民主党政権のままであったとしても、大統領が交代すれば、周辺海域の支配権をめぐる中国の戦術に対する見方は変わるかもしれない。だが過大な期待は禁物だ。今のアメリカは国外でも戦争に疲れ果て、内向きになっている。オバマ以降の大統領が誰であろうと、アジアまで出かけていって、『グレーゾーン』の紛争に首を突っ込もうとはしないだろう。たとえ同盟国を助けるためであっても」(同)  中国が尖閣諸島に手を突っ込んできたとき、アメリカは本当に日本を助けてくれるのか。安倍首相はオバマに膝詰めでそのことを談判しなければいけないはずだが、オバマは言質を取られるようなことはいわないだろう。  安倍首相が本心からアジアの安定を望むなら、アメリカの仲介なしに中国、韓国との首脳会談にこぎ着けるべきである。その覚悟が安倍首相にはあるのか、疑問だ。 (文=元木昌彦)

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