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トイレでの禁止事項を描いた中国のポスター。もちろん、これはジョークなのだが……
中国東部の江蘇省で今月4日、23歳の男性がいつものように自宅トイレの便器に座ったところ、いきなり崩壊。男性は下半身に大ケガを負い、トイレの床は一面、血の海になったという。いったい、便器に何が起こったというのだろうか?
この男性、大きいほうをする際は、便座に座るのではなく、便座を上げて、便器の縁に両足で乗っかり、しゃがんで用を足すのが常だったという。つまり、西洋式の便器を和式トイレのようにして使っていたわけだ。
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見事に崩壊している便器。よく見ると、割れた部分が非常に薄いのがわかる
中国事情に詳しいライターの吉井透氏は、同国のトイレについて、こう説明する。
「ニーハオ・トイレは有名ですが、さすがに都市部の公衆トイレではもうほとんど見かけません。しかし、中国人には公共施設をきれいに使うという概念がないため、公衆トイレは非常に汚い。便器の便座などは汚れっぱなしなので、人民たちは直接お尻が触れないよう、座らずに便器の縁に乗っかって用を足すしかない。この男性は、その習慣で、家でも同じようにしていたのでしょう」
乗っかっていた便器が崩壊したものだから、無防備な下半身には便器の破片が突き刺さり、この男性は臀部に約20センチもの裂傷を負い、大出血。すぐに病院に運ばれ、1時間に及ぶ縫合手術を受けた。医師の話によると、あと数センチずれていたら、傷が動脈にまで達し、命を失う危険性もあったという。
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もうこうなると、便器の問題というより、取り付けの問題ではないかと思われる
それにしても、縁に乗っかったくらいで便器が崩壊するとは……。この男性の家のトイレがたまたま不良品だったかと思いきや、調べてみると、出てくる出てくる、中国各地で便器の崩壊事件は起きていた。
2015年3月、同じく江蘇省のアパートで一人暮らしをしていた女性が、夜中に目が覚めてトイレに行ったところ、座った途端に便器が崩れ落ちるように壊れ、下半身に大ケガを負う事件が起こっている。壊れた便器は「山湖」というメーカーの製品で、90年代には人気だったが、今ではほとんど見ることがないという。
また、古都・西安にあるビジネスホテルの一室では、宿泊客がトイレのフタを開けたところ、いきなり便器そのものが横に倒れたという。ただし、これに関しては宿泊客の証言だけしか証拠がなく、この宿泊客がムリな体勢で便器に乗っかったことが崩壊の原因となった可能性も捨てきれない。
このほか、カラオケ店の便器が“爆発”して、女性客がケガを負うという事件も起きている。つまり、中国製の便器は、いつ壊れるかわからないようなシロモノが多いというわけだ。
これらの便器崩壊事件は、便器そのものの欠陥、そして人民たちの便器の縁に乗っかる習慣という、2つの中国スタンダードによる産物といえるだろう。
(取材・文=佐久間賢三)