韓医学というものをご存じだろうか? これは東洋医学のひとつで、韓国を中心に普及している医学体系、また施術などを総称したものだ。 今回、ソウルのとある有名韓医学専門病院(以下、A医院)が処方した“韓薬”に、疑いの目が向けられている。なんでも、その薬を飲んだ1歳半のソン君(仮名)の髪の毛やまゆ毛が、ほとんど抜け落ちてしまったというのだ。ソン君の両親によると、服用を始めて1週間ほどたった頃から、脱毛の症状が表れ始めたという。 そもそも両親は、息子の免疫力を高めたいと考え、韓薬を処方してくれるA医院を訪れていた。ソン君はその直後、風邪や腸炎の症状を示し始め、ほかの病院で治療を受けることに。その約1カ月後、再び処方されていた韓薬を服用し始めたという経緯がある。 A医院側は「脱毛との因果関係が証明されておらず、患者の両親による一方的な主張」と、韓薬との関係を否定。「通常、薬が脱毛の原因になっているならば、薬をやめれば髪はまた生えてくる。だが、ソン君の場合は、薬の服用をやめたにもかかわらず、脱毛が続いている」と説明した。 一方、両親は「大学病院の皮膚科で『処方された韓薬が脱毛の原因であるという可能性は否定できない』と診断された。韓薬が原因ではないという根拠はない」と、両者一歩も譲らずの膠着状態が続いている。 両親がA医院に疑問を持つ理由は、ほかにもある。というのも、A医院に「子どもに処方した韓薬の詳細を教えてほしい」と願い出たところ、長い間、なんの回答もなかったのだ。A医院側は、処方から8カ月が経過した頃になってようやく、両親の求めに応じて医療情報を公開した。 ちなみに、韓薬の副作用が原因とみられる体調不良の報告例は、ここ最近だけでも決して少なくない。例えば、キム君(10歳)は昨年、子ども専門の韓医院で処方された薬を服用した後、黄疸の症状が表れた。キム君の母親は「息子の身長が伸びず、鼻炎の症状があったので、韓医院で診てもらった。薬を服用した数日後、子どもの目が黄色くなったので別の病院で検査したところ、急性肝炎だと診断された」と、話している。 韓国消費者院によると、韓薬に関する消費者の相談件数は、年間2,000件前後。これは、医療全般に関する全相談件数の5%程度にすぎない。というのも、韓薬は西洋の薬と比べ、副作用との因果関係を立証するのが難しい。そのため、被害が報告される事例も少なく、不満を抱いても、約8割が当事者間で“解決”されてしまうというのだ。つまり、相談しても解決しにくいので、相談件数自体が少なくなる傾向があるということになる。 長い歴史と伝統を誇る韓医学。ただ現代社会においては、少なくない問題を抱えている。今後、その治療の科学的根拠を追及する声が、徐々に高まっていくかもしれない。 (文=河鐘基)ソン君のビフォー・アフター(ハンギョレ新聞より)
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“韓薬”を服用した子どもに副作用続々?「1歳児の髪は抜け落ち、10歳児は急性肝炎症に……」
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