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等間隔で丸い傷痕が並んだ、李さんの背中
体の凝りや、美容、冷え性などにも効果があるとされ、日本でもじわじわと広がりを見せているカッピング療法だが、その故郷である中国で、施術された患者が命の危険に晒される医療過誤が発生した。
吸い玉、プハンなどさまざまな呼称を持つカッピング療法だが、中国では抜罐(バーグヮン)と呼ばれ、民間療法として1,000年以上の歴史を持つともいわれている。内部を減圧したカップを患者の背中に吸い付かせることでうっ血状態にさせ、「悪い血を抜く」というのが基本的な考え方だ。
しかし、このカッピング療法に、重大な副作用が確認されたのだ。
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カッピングにより、こうした水泡ができた時は要注意だ
ヤケドのように黒ずんだ、複数の大きな丸い傷。よく見ると、その傷は肉をえぐるように、凹面になっている。これは、四川省の李さん(63歳)の背中である。
五十肩に悩まされていた李さんは、治療のためにマッサージ店に毎日通い、そのたびに約1時間のカッピング療法を受けていた。しかし、1カ月通院しても症状は良くならず、そればかりか高熱に悩まされるようになったという。
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かつては竹筒を使用していたため、カップ内の負圧も、それほど強力になることはなかったという
そこで病院に診察を受けに行ったところ、前述のようなひどい状態の背中を見た医師に驚かれたというわけだ。
医師によると、1カ月もの間、同じ部位をうっ血させ続けたことによって皮膚が損傷を受け、そこから入り込んだ細菌に感染して、菌血症になっていたのだ。もう少し診察が遅れていれば、さらに重度な敗血症となり、命の危険もあったという。
中国事情に詳しいフリーライターの吉井透氏も、カッピング療法の危険性について話す。
「カッピング療法は、特に華南や中国西部では、今でも日常的に親しまれている半面、風邪をひいた時にも効果があると信じられているなど、疑似科学的な側面もある。また、中国の民間療法は全般的に、『痛いほど効く』と信じられる傾向にあり、やりすぎて背中の吸い跡が慢性化している老人も多いです。また、中国のマッサージ店は、風俗店を兼ねていることもあり、衛生的に問題がある店が多いので、傷になるほどの施術を受けるのは危険」
日本でも、カッピング療法は鍼灸と異なり、施術に必要な資格などは存在しない。どんなクリニックで受けるかには、慎重になったほうがよさそうだ。