突然アダルトサイトの支払い請求が来て、“24時間以内に振り込まないと訴える”などと脅してくる「架空請求詐欺」。定番中の定番なのだが、実はこの3~4年、被害件数が拡大している。被害総額に至っては大幅増加で、2014年には約176億円にもなっている。しかも、女性や高齢者で被害に遭う人の割合が増えているのだ。 本連載でも取り上げたことがあるが(参照記事1)、架空請求のメールが来ても、基本無視すればいいだけ。デジタルに強い人は鼻1歌交じりに無視できる文面でも、詳しくない人は真に受けてしまうのだろう。そのような人が、まだまだたくさんいるようだ。そこで今回は、架空請求の手口と対処法、最新情報を紹介する。 架空請求の基本的な手口は、「総合情報サイト」や「無料動画サイト」から督促メールを膨大な人数に送りつけるというもの。「訴訟を起こす」「差し押さえをする」といった脅し文句とともに、IPアドレスやメールアドレスなどをあからさまに提示して、個人情報を突き止めているかのように振る舞うのだ。もちろん、記載している口座に振り込んだらそこで終了だが、巧妙なことに、“記載電話番号に連絡すれば、減額に応じる”と書いている場合もある。電話すれば電話番号が漏れてしまうし、話の流れで名前も簡単に聞かれる。誘導されて、住所を教えてしまったらおしまいだ。第三者に相談するまでは、とことん付きまとわれることになる。しかし、アダルトサイトや出会い系サイトを切り口にする架空請求の場合、第三者に相談しにくくなる。若い男性なら開き直れるところ、女性や高齢者だと「絶対に人に知られたくない」と慌てて電話したり、振り込んでしまうケースが増加しているのだ。 まず、最も大切なのは反射的にリアクションしないこと。相手は大量のアドレスに架空請求メールを送りつけているので、リアクションがなければスルーされるだけ。反応すると「カモ」認定され、さらに面倒なことになる。次に、口座が書いてあるなら検索してみる。詐欺行為に使われている口座は、ネットに晒されていることが多いためだ。なお、裏社会での使い捨て口座の価格は高くなっており、最近のトレンドは宅配便を使って現金を送付させる手口だ。当然、住所が書いてあるので、それも検索してみよう。怪しい場合は警察庁の「インターネット安全・安心相談」ページ(https://www.npa.go.jp/cybersafety/)で調べたり、通報・相談してみるといいだろう。 詐欺師は、とにかく相手をビビらせることに長けている。定番は、「アダルトサイトや出会い系サイトを使っていることが、周囲にバレるよ」という脅し。最近は、怪しげなウェブサイトを表示した時にシャッター音を鳴らして、ユーザーの顔を撮影したかのように脅すケースもある(参照記事2)。訴訟を起こすというのも本気にしてしまうと、ストレスになるだろう。被害に遭った人の平均支払金額も増加傾向にあり、14年度のデータでは約28万円。若いユーザーだと、ビビってしまってもそもそも支払えないので、様子見していたところ何も起きないので助かった、となる。しかし、ある程度の年齢で、体面を気にする立場だと、引っかかってしまう可能性が高くなるのだ。 くれぐれも、架空請求のメールには反応しないことを肝に銘じてほしい。ただし、メールや電話で住所などの個人情報を漏らしてしまった場合は注意が必要。その後、知人からのアドバイスなどで無視に転じても、収束しない可能性があるのだ。実際は詐欺であるのに、相手が少額訴訟を起こすケースがある。すると、裁判所から書類が届くのだが、一切を無視するというスタンスでこれも無視すると、裁判で負けることになり、なんと支払い義務が法的に発生してしまうのだ。「無視する」という対策を逆手に取った手法といえる。 疑心暗鬼になっている被害者は、裁判所に問い合わせするかもしれない。そのようなアドバイスも、ネットに出ているからだ。しかし、そのさらに裏をかくケースも起きている。裁判所からの書類を偽装して、問い合わせ先として自分たちの電話番号を記載しているのだ。電話が来れば、裁判所をかたって「支払ったほうがいいですね」と誘導するのも簡単だ。そうすれば、実際に訴訟を起こす手間も省ける。この場合は、書類の電話番号は無視して、裁判所の番号をネットで調べてかけること。本当に訴訟を起こされているなら異議を申し立て、そうでないなら無視すればいい。 年間176億円も儲けられるのだから、これからも架空請求を手掛ける詐欺師は増えていくだろう。くれぐれも、引っかからないように、また被害者を増やさないように、知人にもアドバイスしていただきたい。 (文=柳谷智宣) 参考URL <https://www.npa.go.jp/cyber/warning/chuikanki/kakuu.htm> <http://www.moj.go.jp/MINJI/minji68.html>イメージ画像(「Thinkstock」より)
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被害総額176億円! 年々増加する「架空請求」その最新手口とは
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