よくネットは匿名といわれるが、実はそれほど匿名性が高いわけではない。さまざまな手法で身バレする。ネットで調子に乗ったことをしていると、身元を特定されて炎上騒ぎになり、一生汚点を残すことになるリスクがあるというわけだ。 特定の初歩としては、IPアドレスを手がかりにする方法がある。メールやメッセージを送ったり、掲示板に書き込んだりすると、そのシステムにIPアドレスが記録される。これは、ユーザーの端末もしくはネットワークそれぞれに割り振られたアドレスで、その時そのアドレスを使っている端末は一台だけ。このアドレスを割り振っている、インターネットサービスプロバイダーや携帯電話会社に聞けば、ユーザーを特定できるのだ。とはいえ、掲示板やブログの運営会社からIPアドレスを聞き出したり、IPアドレスから個人情報を聞き出すには、法的な裏付けが必要となる。個人の興味本位では無理だが、誹謗中傷や犯罪予告など法に触れることをしていれば、開示されるケースも多く、特定できるのだ。警察は主にこの方法で、ユーザーを特定している。 さらに、2ちゃんねるの「特定班」と呼ばれるユーザーたちは、それどころではない調査能力を発揮する。調査する「人数」と「時間」が突出しているのが理由だ。粘着して積極的に調査・書き込みするのは10~100人程度だと思われるが、炎上するとスレッドを閲覧する人数は数万~数百万人に及ぶ。すると、高い確率で、その知り合いの目に留まるのだ。こうして、個人情報や卒業アルバムがさらされることになる。 ブログやSNSで炎上の元になる投稿をした場合、ハンドルネームを使っていたとしても、過去の写真や文章にいくらでも手がかりがあるので、速攻で特定される。Twitterでバイトテロと呼ばれるバカな投稿をしたり、飲食店で不衛生な悪ふざけをするヤカラが特定されるのは、個人情報を防御するリテラシーさえないからだ。 さて、中級者になると、自宅のネットワークや自分で契約したスマートフォンを使うことはない。野良Wi-Fiと呼ばれるセキュリティをかけていない無線LANを利用したり、端末登録していないノートPCを使って悪さをする。もちろん、自分の名前や所属などは絶対に書き込まない。単発のいたずらであれば確かにバレにくいのだが、ここまでするヤカラはネットの中で強烈な自己主張をすることが多い。すぐに身元がバレない安心感から、ネットを荒らしまくるケースが多いのだ。このレベルのヤカラでも、わずかなほころびから破綻する。 ネットでいきがるヤカラは、匿名(と信じている)アカウントで暴れるほか、普通に利用しているSNSアカウントも持っていることが多い。この内容が似通っていることで、身バレにつながることがある。例えば、通常アカウントでは「本日はイタリア出張で~」と書き、匿名アカウントでは「貧乏人はゴミでも漁ってろ、俺はイタリアで優雅に~」などと書き込むのだ。これが重なると、同一人物なのでは? という疑惑が出る。 本人疑惑が出ると、あらゆるSNSをほじくり返され、数日で住所が特定される。10年以上前に炎上したケースでは3日で特定され、第三者が自宅に突撃している。3年前に起きた炎上ケースでは、大学の合格通知書のごく一部を投稿しただけですべての個人情報を特定され、ものすごい嫌がらせを数年にわたって受けることになった。盗撮はもちろんのこと、覚えのないデリバリーサービスを注文されたり、ゴミを漁られたりする。もちろん、違法行為だが、警察がすべてを取り締まれるわけでもない。 上級者は、IPアドレスからは身元にたどり着けないTorというツールを使って悪さをする。しかし「ありとあらゆるダークサイト情報が満載! 賢い『ディープ・ウェブ』の歩き方」で紹介したように、Torユーザーでさえ身元を特定することは可能。今年9月には、Torを使って児童ポルノを購入した3人が逮捕され、ニュースになったばかりだ。 とにかく個人を特定されて逮捕されたり、炎上させられたくないなら、ネット上では調子に乗らないことが重要。掲示板やブログを荒らしたり、他人を攻撃したり、違法行為をしていると必ずしっぺ返しをくらう。もし数回のいたずらで捕まっていなくても、綱渡りをしている状態というのは肝に銘じておこう。さらに、今は大丈夫でも、将来問題視されて、数年後に特定されて炎上・逮捕されることだってある。その時、足を洗っていても、言い訳にならない。リアルと同様ネットでも、常識を持って行動するという当たり前のことが、トラブルを防ぐために最も有効なのだ。 (文=柳谷智宣)イメージ画像(「Thinkstock」より)
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調子に乗ったら必ずしっぺ返し! ネットの「身元特定能力」を侮るなかれ
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