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老人が行方不明になったゴミ山。重機による捜索が行われたが……
中国で、また悲しい事件が起こった。11月27日、陝西省のある村で、ゴミ拾いをなりわいにしていた老人が突然、失踪したという。家族とゴミ拾い仲間の話では、ゴミ山に埋もれている可能性が高く、捜索を続けているが、いまだに発見されていないという。「華商報」などが11月29日付で報じた。
もともとこの村の郊外には巨大な採石場があったが、採石した後の谷や溝を利用したゴミ捨て場に生まれ変わったという。以来、付近の村の住人たちはこの巨大なゴミ捨て場にやってきては、プラスチックやガラス、金属など再利用できるものを拾って小遣い稼ぎしたり、紙や木片を拾って家庭で燃料として使用していたという。
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丸2日間の捜索でも発見できず、途方に暮れる家族
現場では重機で掘り起こすなど捜索活動が続けられたが、ゴミ捨て場はあまりにも広大で、大量のゴミが埋まっており、まるで砂漠で針を探すような作業になっているという。この老人には5人の息子がおり、妻と子どもたちが丸2日、探しているが、一向に見つからないという。同紙は専門家の意見として、「ゴミの山の一部が自然発酵・燃焼して空洞ができ、落とし穴のような状態になって、そこに落ちて窒息死してしまったのではないか」としている。
老人は79歳。こんな高齢者がなぜ、ゴミ拾いをしなければいけないのか? 北京市在住の日本人大学講師は、中国の“闇”をこう解説する。
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貧しい高齢者のゴミ拾いはなくならないのか(イメージ画像)
「中国では都市部でも、路上に不燃ゴミや可燃ゴミがごちゃ混ぜになって堆積していることがありますが、これはゴミ拾いや分別人の存在があるからです。貧しい人やホームレスは路上のゴミを分別し、換金できるものは売って生活をしている。この国では、立派な職業です。2006年のデータですが、北京市内だけで2万5,000人がこうした仕事をしていることがわかっています。内陸部の貧しい地域では、村ごとゴミ拾いで生計を立てているところもあります。行政側もそれをわかっていて、貧しい村の近くにゴミ捨て場や産廃処理場を持ってくることもある。環境汚染による健康被害がもちろんあるのですが、貧しい人々にとって、健康被害より日銭が入ってくることのほうが重要なので、お構いなしです」
ゴミ漁りといえば、フィリピンのスモーキー・マウンテンやインドのスラムなどが有名だが、中国でもスカベンジャー(ゴミ拾いで生計を立てる人々)は少なからず存在する。貧富の格差が社会問題と化して久しい中国だが、こうした悲劇が繰り返される限り、まだまだ先進国の仲間入りはできないだろう。
(取材・文=棟方笙子)