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Channel: 日刊サイゾー
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「らしく、ぶらず」『THE Q』が検証する、大人が「ももクロ」にハマる理由

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momoclojingu11116.jpg 「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。 「『らしく、ぶらず』ですよ」  笑福亭鶴瓶は「一流」について、そう語る。たとえば、アイドルならば「アイドルらしく、アイドルぶらず」だ。  11月10日、日曜お昼の『サンバリュ』枠で放送された『THE Q』(日本テレビ系)は、鶴瓶と桝太一アナをMCに、徹底した取材で現代を描く新型番組というコンセプト。その最初の取材対象は「ももいろクローバーZ」で、「なぜ、ももクロにハマる大人が増えたんですか?」がテーマだった。  鶴瓶は自身のラジオにももクロがゲスト出演した際、「会ったらみんな好きになる」とその魅力を感じ、主催するイベント「無学の会」にも彼女たちを呼んだ。そんな経緯もあり、彼女たちをほとんど知らない桝に教え諭すように「こんないい娘たちが出てきたのかって思う」「スレてない」と絶賛していた。  番組では「10の扉」に分けて、ももクロの魅力の秘密を探っていく。「徹底取材」を掲げるだけあって、非常に丁寧で、さまざまな角度から証言を集めて立体的に検証。まず、路上ライブからNHK『紅白歌合戦』出場までの軌跡を紹介、ファンに「なぜハマったのか」をインタビューする。そのキーワードになるのは、やはり「一生懸命」だ。  「全力で一生懸命」なところが魅力だと、ファンは口を揃える。「そんな姿に、自然と涙が出てくる」と。それについて本人たちに直撃すると、有安杏果は「一生懸命な人、いっぱいほかにもいるもんね」と言う。それにうなずき、玉井詩織は「とくに全力でやろうって意識してやってるわけじゃないし、“全力でやれ”って言われてるわけでもないし」と補足した。そう、彼女たちが言う通り、「一生懸命」なアイドルはほかにもいる。というより、むしろ「一生懸命」ではないアイドルを探すほうが難しい。ではなぜ、ももクロは「一生懸命」という部分が強調されて支持を集めるのだろうか?  結成3年目、若手アーティストの登竜門ともいわれる、日本青年館大ホールでのライブを成功させたももクロ。それがブレークの兆しだった。そのきっかけは、HMVの店頭に飾られたパネルだったと、番組は検証する。飾ったのは当時、店員だった佐藤守道(現ももクロスタッフ)。彼は「すごいものを見た」「メーターが振り切れていた」と、早くからももクロに衝撃を受けていた。いまや、ももクロの代名詞となった百田夏菜子のエビ反りジャンプを写した写真に添えた「このジャンプがアイドル史を更新する。」というコピーが躍ったのだ。  当時、ももクロの所属事務所はアイドルがいなかった。だから、誰もやり方がわからなかった。だが、それが逆に奏功した。 「アイドルだからこうしなくちゃいけないとか、アイドルだからこれをやっちゃいけないというのが一切なかったんですよね。(エビ反り)ジャンプも『ダイナミックだからいいじゃん』くらいの感じで(始めた)」 と百田は証言する。アイドルらしからぬその過剰なライブパフォーマンスは、いつしか「ももクロらしい」としか言いようのない、新たなアイドル像を作り上げた。そして過剰な彼女たちを、ファンが過剰に後押ししていったのだ。  この番組のつくりはとても丁寧だったが、ももクロの大きなトピックスの中で、“あえて”なのかわからないが、なぜか触れられなかったのが「早見あかりの脱退」だ。それが、偶然にも同じ日に放送された『夏目と右腕』(テレビ朝日系)で取り上げられていた。ももクロの“右腕”である、振付師の石川ゆみがゲストだった。  そこで、早見が女優を目指すことを決断し、会議室でメンバーに直接脱退することを伝える映像が放送された。ももクロがブレークの兆しを見せ、いよいよ大きく飛躍しようという矢先だった。 「ずっとずっと考えてたんだけど…やっぱり私は…ももいろクローバーを4月10日に脱退します……」  涙ながらにそう宣言する早見に、メンバーは「わけわかんない」「なんで?」と号泣した。早見はももクロのサブリーダーで、精神的支柱だった。そんな彼女の脱退は、早見に頼りがちだったももクロの一人ひとりを強くした。  そして2012年――。ももクロは早見を含めた「6人」の夢だった『紅白歌合戦』に出場。そこで早見のカラーである青い光を胸に輝かせながら「アカリ」と名前が歌詞に入った「6人」バージョンの「行くぜっ!怪盗少女」を歌い上げるのだった。  「ももクロやってから、行動すれば絶対かなうって思うようになった」(高城れに)、「とりあえずやってみようと思うよね、できなかったら、その時また考えようって」(佐々木彩夏)、「不可能は存在しないって、たまに思うよね」(有安)、「やる前にあきらめることはあんまりない」(玉井)、「だって、ムリと思ったら目指せないですもん」(百田)と5人は見事なまでに同じことをそれぞれの言葉で語る。それは、観客がわずか数人の路上ライブからはい上がり、『紅白』という「夢」にたどり着いた彼女たちだからこその説得力を帯びている。  そして夢は更新される。百田は「今」の夢を語る。 「オリンピックが東京で開催されることが決まって、(新しい)国立競技場に初めて立つ時がオリンピックの開会式だったらいいなぁとか……。その時の、ももいろクローバーZの集大成のものを見せたい」  “そんなの絶対ムリだよ”と笑えるだろうか? 彼女たちは、「絶対ムリ」を何度も覆してきたのだ。  佐々木は「一生懸命やるのってカッコいいよね」と言う。 「学校とかで『ちょ、ダリィ』とか言う人いるじゃないですか。絶対一生懸命やってると楽しいのにって、ももクロやってるとすごい思う」と。  これこそが、ももいろクローバーZだ。「一生懸命」だからいいわけじゃない。「楽しむこと」に一生懸命だからいいのだ。多くの場合、「一生懸命」にはある種の悲壮感が漂う。けれど彼女たちには、それをほとんど感じることはない。なぜなら「一生懸命」を心底楽しんでいるからだ。だから見てるほうも、その楽しさに溺れることができるのだ。  ライブ前、メンバーやスタッフたちと円陣を組んで、百田が叫ぶ。 「楽しむ準備はできてるか!」 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

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