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倒産した蘇州普光の工場。途方に暮れる若い従業員の姿も
主力となるスマホの販売不振で、韓国サムスン電子の凋落が指摘されて久しいが、頼みの綱である中国市場でも同社をめぐって混乱が起きている。
7月20日、サムスンの部品メーカーとして受託生産(OEM)を手掛けていた蘇州普光が倒産したというニュースが報道され、ネット上ではさまざまな臆測が飛び交った。「中国毎日経済新聞」が伝えたところによると、影響は同社が大株主である広東省の「東莞普光」にも波及。液晶ディスプレイをサムスンに提供する東莞普光は7月1日から現在まで約1カ月間、生産ラインがストップしている状況だという。
倒産した蘇州普光は、韓国財閥の普光グループが07年4月、蘇州市東南部に位置する呉江開発区に設立した企業で、主要な業務は新型電子部品の開発と生産だった。しかし、実質的な顧客はサムスン1社のみで、サムスンのあらゆる製品を受託していたため、親会社である韓国普光グループが破産申し立てを行うと、中国の現地法人も自然と立ち行かなくなった。蘇州普光はサムスンからの発注が減少していく中、徐々に経営困難に陥ったが、状況を悪化させたのは、現地法人で働く韓国人責任者が6月中旬に突如、“夜逃げ”するがごとく帰国してしまったことだ。管理責任者のいなくなった現場は大混乱に陥り、資産は債権回収のため銀行に差し押さえられたという。
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突然、操業を停止した東莞普光。韓国人責任者が軟禁される事態に
蘇州普光は約1,900平米の敷地に800人余りの従業員を抱えており、従業員への補償問題が未解決状態だ。銀行から4億元余り(約80億円)の負債を抱え、下請け企業への支払いも滞っているため、債権者たちが集まって紛糾している。こうした状況の中、蘇州サムスンは話し合いの末、職員の給与と賠償金については開発区の管理委員会が債務状況を清算整理することが決まったものの、下請け企業への多額の支払いは依然、どうなるかわからない状況だという。
広東省東莞市に住む日本人ビジネスマンは、こう証言する。
「操業停止した東莞普光には、もともと3,000人以上の従業員がいたんですが、いまや200人以下しかいないそうです。管理職を含め、7月1日~8月1日まで給与なしの休暇通知が出されたタイミングで蘇州普光の韓国人責任者の夜逃げが伝わってきたので、若い従業員が朝から晩まで韓国人責任者の逃走を阻止しようと軟禁したそうです。併せて工場内でもかなりの乱闘騒ぎがあったみたいですが、東莞市の労働部門が介入し、職員との間に支払いを確約する取り決めが交わされ、やっと事態は収束しました」
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中国で一世を風靡したGalaxyも、いまや完全にオワコンか
サムスンはこの数年、モバイル部門の売り上げが中国でも不調だ。高機能で低価格なスマホを商品化する国産メーカーが次々と台頭してきたため、iPhoneとGalaxyが競り合う勢力図はあっという間に塗り替えられたからだ。2015年第二四半期の中国国内のスマホのシェア統計では、小米(シャオミ)が18%、華為技術(ファーウェイ)16%、Appleが12%と続き、vivo(歩歩高)が10%、サムスンが9%という結果となり、低迷感は拭えない。中国サムスンは利益の60%前後をモバイル部門が占めており、スマホの売り上げが傾けば企業全体への影響は避けられない。
中国の“アキバ”こと深セン市・華強北に住む日本人バイヤーは言う。
「つい2年ほど前までサムスンがひとり勝ちだったのに、いまや見る陰もない。サムスンのスマホを売っていた代理店も、みんなシャオミやOPPOなど国産メーカーの販売店になってしまった。例えば、最新のGalaxy S6はこっちで10万円以上するのに、同等スペックの中国製スマホは4万円くらいで買える。デザインも中国製は良くなってきているのに対し、サムスンは基本的に数年前からあまり変わってない。若い女性たちから見放されていて、いまやGalaxyを使っているのは農民工や田舎のオッサンだけ。中国でも、完全にオワコンです」
日本だけでなく、中国でもサムスン離れが加速する中、韓国経済を牽引する動力の失速は、世界経済にどんな影響を与えるのか?
(取材・文=五月花子)